裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 ——望むなら、こうやって触れるくらいはかまわない。でも君との将来は約束できない。
 和葉はそれをひどいとは思わなかった。
 これは彼の優しさだ。和葉がまたひどく傷つかないように、先に釘を刺しておきたいのだろう。
「和葉——」
「言わないで!」
 遮り、被りを振って、懇願した。
「……お願い言わないで」
「でも」
 眉を寄せてなおも言いかける彼の唇を、和葉は自分の唇で塞いた。
 ——わかってる。だから、なにも言わないで。
 一瞬、戸惑う彼を誘うように唇を食み、彼の背中に腕を回すと、再び甘いキスが与えられる。
 言いたいことはわかっている。
 自分の置かれている状況とやがて迎える結末も、どれだけ自分が愚かなのかも。
 なにもかも、わかっている。
 つまり自分は負けたのだ。
 決して愛してくれない彼に恋焦がれるこの気持ちに、打ち勝つことができなかった。
 だからもう、身を任せるしかないのだろう。
 それでもはっきりと言葉にされるのはつらいから、言わないでほしかった。
 ——その代わり、今度はもうあなたを恨んだりしないから。
 心の中で繰り返し、和葉は彼のシャツを握り締めた。

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