裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
《皆様、当機はまもなく福岡空港へ着陸いたします。地上スタッフからの報告によると福岡空港の天候は晴天、気温は摂取二十度……》
 着陸体制に入ることを知らせる遼一のアナウンスが流れて、しばらくすると、飛行機は無事に離陸した。
 驚くほどスムーズな離陸に女性が和葉を見て安堵したように笑った。
「本当に上手な機長だったのね。思ってたより怖い思いをしないで済んだわ。教えてくれてありがとう。とっても心強かったです」
「いえ、それほど揺れなくてよかったですね」
 元航空会社の社員としては、彼女がこれ以上飛行機を苦手にならなくてよかったと思う。
 飛行機が完全に停車してベルト着用サインが消えると、ドアが開いて乗客たちが立ち上がる。小さな樹を連れている和葉は、少し人が捌けるのを待ってから立ち上がった。
 出口へ向かうと、遼一もCAたちと並んで乗客を見送っていた。
 和葉の前を行く隣に座っていた女性が、遼一の名札を見て声をかけている。
「私少し飛行機が苦手で、不安だったんですけど、機長さんのアナウンスで落ち着きました。飛行中も揺れなくて……ありがとうございました」
「それはよかったです。こちらこそ、ご利用いただきありがとうございました」
「アナウンスの時にこちらの方が、橘機長さんなら大丈夫って教えてくれたんですよ。信頼できる方だから、安心ですよって」
 女性が振り返り和葉を見る。
 つられるようにこちらを見て、遼一が眉を上げた。
 和葉は少し気まずい気持ちになる。
 さいわいにしてCAたちは他の乗客に気を取られている。
 女性を見送った遼一が、和葉に向かってにっこり笑った。
「ありがとう」
「い、いえ……」
 彼は腕の中の樹に向かって声をかける。
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