裏切りパイロットは秘めた熱情愛をママと息子に解き放つ【極上の悪い男シリーズ】
 当初は別々にホテルを取っていたのだが、彼の希望でこうなった。
 その時彼が口にした『せっかくだから、できるだけ長く三人で過ごしたい』という彼の言葉を思い出し和葉は複雑な気分になった。
 せっかくだから、という言葉は東京では和葉のマンション以外では会えないという状況の裏返しなのだ。
 彼はマンションへ来ていることを周囲に用心深く隠しているし、和葉も同じだった。夕方ではなく昼から会える時も家の中でいくら遊んでも公園に連れて行くことはしない。けれどさすがに九州まで来れば人の目を気にせずに三人で外出できるというわけだ。
 提案を受けた時も和葉は複雑な気持ちになった。以前なら、馬鹿にしてる、そんな都合のいい関係は必要ないと憤ったかもしれない。でも、樹のためだと思い受けたのだ。もちろんそれが言い訳に過ぎないことはわかっている。本心ではただ、彼と樹と一緒に出かけたかっただけなのだ。
 そんな事情を除けば、今日一日は楽しかった。
 叔母がHOPHOP二号店の最終候補地に選んだのが、目の前に広がる門司港で、隣接するレトロな建物や異国情緒漂う建物のショップが立ち並ぶエリアもある。
 その辺りの雰囲気が、外国発であるHOPHOPと合うのでは?と考えたようだ。
 若い世代が多く訪れる場所というのも好条件だ。
 現地業者との打ち合わせは樹を連れていて軽くしかできなかったが、それでも実りあるものだった。帰ったらそれらと、自分の目で見たあれこれをまとめて、叔母に送ることになっている。
 視察後は、遼一と合流して門司港観光を楽しんだ。
 時間帯によって上がる桟橋や、港に停泊している船に樹は大興奮で、しょっちゅうきゃーっと声をあげて手をパチパチさせていた。
 和葉も今日だけは、すべての事情を忘れて擬似家族の時間を楽しんだ。
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