(番外編集)それは麻薬のような愛だった



「ねえ、週末はどうする?」


ただ並んで歩くだけの中、私は隣にそう声をかける。すると伊澄は一瞬だけこちらに目くばせをした。


「っ!」


その視線だけでどきりとした。ただの無表情で、気だるげな雰囲気ですらあるのにそれが妙に色っぽくて、体に勝手に熱が集まっていく。


「別に。してえことあんなら付き合うけど」


そんな私とは裏腹に、伊澄は顔色ひとつ変えることなく前を向く。

全く意識されてないであろう仕草に、ちくりと胸が痛んだ。けれど、ここで諦めるわけにはいかない。

多少時間がかかっても、伊澄の心を掴むと決めたじゃないか。それで、私を馬鹿にする周りを見返してやるのだ。


「じゃあショッピング行こうよ。伊澄に服選んでもらいたい」

「分かった」


伊澄はそう短く返すだけだった。

話しかければ応えてはくれる。けれど彼から何かを持ち掛けてきたことはない。会話も、デートも、メッセージのやりとりでさえも。

2週間経つ頃にはセックスもしたけれど、いまいち気持ちよくなかった。

上手いとか下手とかそういうのではなく、なんというか、義務的で。心此処にあらずって感じだった。

行為中に男が囁く愛は偽りだなんて聞くけれど、そんなことすらなくただ快感を拾うだけのそんな行為。


私だって馬鹿じゃない。1ヶ月も経つ頃には伊澄が私を好きでないことくらい十分に理解していた。

けれどもはや意地だった。私だけは違うと、学年一の美少女と持て囃されるくらい特別な私がそんなはずがあるわけがないと。

そのはず、だったのだ。


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