(番外編集)それは麻薬のような愛だった


——けど、さ…


そういうのって、彼氏の方から否定してくれるものじゃないの。今までがどうであっても、今付き合ってるのは私なんだって。

私は、伊澄の口からそれを言って欲しかった。


ふと見上げると、伊澄は全く別の場所に目を向けていた。


——え…?


伊澄の視線の先は運動場。今現在練習をしている女子に向いていた。

そしてそのときの伊澄の顔は、初めて見る表情をしていた。

いつもの鋭さが少し和らいだような…ほんの少し、笑っているような、そんな顔。


——誰を見てるの…?


視線の先が誰であろうとどうでもいい。今目の前にいる伊澄が私を見ていないことが、辛かった。

私を見てよ、伊澄。
他の女なんか見ないでよ。


「…っ」



静かに、ゆっくりと。
私の寂しさはそうして静かに積もっていった。


< 23 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop