(番外編集)それは麻薬のような愛だった
「雫っていい名前だね」
そう言って笑うと、雫も照れたようにはにかんだ。
「ありがとう。日下部くんの名前も素敵。どういう字を書くの?」
「立つ風って書く颯に人」
「そっか。爽やかで日下部くんの雰囲気によく似合ってるね」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。杜川さん、学部は?俺工学部なんだけど、キャンパス同じかな?」
「私は経済学部だから別だね。でも共通科目でそっちに行ったりするよ」
「ならついでにこっちの食堂にも来てみなよ。カレーが結構美味いんだ」
「そうなんだ。私もいつも食堂利用するから、今度行ってみようかな」
そんな会話をしつつ連絡先を交換し合い、時折メッセージを送ってみたりした。
その中で感じた事だが、雫はどこか一線を引くのが上手い女だと颯人は思った。
常に穏やかな笑みを絶やさず何でも受け入れてくれそうな雰囲気を纏いつつ、少しでも近付けば壊れてしまいそうな危うさと言えばいいのか。
とにかく触れてはいけない何かが見え隠れしていた。
それが勘違いであったとしても、颯人がまず雫から異性として意識されていない事は明らかだった。