(番外編集)それは麻薬のような愛だった
そんな折、颯人は遅めの昼食を摂るためキャンパス内の食堂に学部の同期と赴いたところ、友人と談笑する雫を見かけた。
「知り合いがいたから声かけてくるわ」
仲間にそう声をかけ、颯人は雫に近づく。「雫ちゃん」と、連絡を取り合ううちに許可をもぎ取った呼び名で呼べば、雫の大きな瞳が颯人を捉えた。
「颯人くん、こんにちは」
向けられた笑顔に咄嗟に可愛いなと思った。今日は髪を結っているのかと、無意識に曝け出された頸に目が移る。
色素の薄い黒髪は後ろで緩やかに束ねられ、雫の首元が剥き出しになっていた。白く細い首筋は何故か異様に扇情的に見え、颯人は邪念を振り払うかようにサッと視線を逸らした。
「お、俺が勧めたカレー、食ってくれたんだ」
やけに挙動不審な物言いになってしまい隣にいた雫の友人らしき女には怪訝な顔をされたが、こればかりは男の性だ、どうしようもない。
そんな邪な心などつゆ知らず、雫は「うん」と穢れも知らないような顔で笑う。
「聞いてた通り美味しいね。あと辛さを選べるのか嬉しい。私辛いの苦手だから」
「そ、そうなんだ」
確かにその言葉通り、雫のテーブルには空になったカレー皿の隣にデザートのプリンが添えられている。
そんなところも可愛らしいなと思っていると、雫の涼やかな声で名前を呼ばれた。