(番外編集)それは麻薬のような愛だった
最後のパレードカーを見送ると一斉に人がはけていく。その波に乗り手洗いに行くと消えた雫は戻ってくるなり土産屋に行きたいと言った。
荷物になると忠告はしたが早い方が空いているからと言われ、雫の望むままにする事にした。
少し移動した先にあった店の中は確かに空いていて、雫は店内に入るや否や一直線にぬいぐるみの元へ歩み寄る。
ほどほどに大きいネコらしき毛玉を手に取る雫は笑顔を浮かべており、吸い寄せられるように伊澄もその隣に立った。
「今度増えんのはネコなのか」
「違うよ。どう見てもキツネでしょ」
どう見ても違いが分からん。その考えが顔に出ていたのか、雫はムキになって尻尾の部分を突き出してくる。
「ほら見てよ。ネコはこんなに尻尾大きくないでしょう?」
「ふーん…」
どちらであろうが伊澄にとっては大差無く、興味のないまま返事を返して「貸せ」と手を突き出した。
不思議そうにしながらも手渡してくる雫からキツネを受け取り、買ってくるから外にいろと告げてレジへと足を進ませる。
「待ってよいっちゃん、どうして…」
「外で待ってろって言ったろ」
「そうじゃなくて、なんでいっちゃんが買う流れになってるの?」
抵抗する雫を無視して伊澄は会計まで済ませ、袋ごと押し付ける。その手で雫を掴み外まで連れ出すも、なおも貰う理由が無いとごねる雫に伊澄は頭を悩ませた。
好きな女が欲しいと言った物を買い与えるのにそれ以上の理由なんて無い。強いて言うなら、雫の喜ぶ顔が見たかったからだ。
しかしそれを伝える勇気は無い。
そういう理由なら余計に受け取れないと突き返されたら。雫からの拒絶に酷く怯える伊澄には、本音など到底口にできるはずがなかった。
スマホをしまおうと入れた懐に入れてあったものに触れ、最後の手段として伊澄はそれに縋る事にした。
「理由ならある」
手袋を取り出して見せれば案の定大きく開かれる瞳。それを手にはめると、中のフリース素材が優しく伊澄の冷え切った手を包み込んだ。