(番外編集)それは麻薬のような愛だった
「——っ…!」
そこで目が覚める。目に飛び込んできた光景は見慣れた天井で、肌触りも慣れた布団の感触。額や首筋には、冷や汗がいくつも流れていた。
「……」
夢か、と安堵しながら額に腕を当てる。自分の意思と同じように動く体にもひどく安心を覚えた。
耳を澄ませば小さな寝息が聞こえてくる。視線を横に移すと、ベビーベッドには仰向けで両手を上げて眠る小さな娘がそこにいた。
それに一瞬だけホッとするも、反対側の温もりが消えていることに気付いた。
「雫…?」
瞬間、サアッと伊澄の中から血の気が引いていく。先の夢が現実になったのかと、酷い焦燥に駆られた。
慌てて起き上がれど部屋の中には雫の影もなく、音すら聞こえない。バサッ!と音を立てて布団を剥ぎ、キングサイズのベッドから降りた。
雫、と。何度も心の中で名前を呼ぶ。焦りを抱え部屋を出て廊下に立つと、リビングに電気が点いているのが目に入る。
勢いのままにそこに続くドアを押すと同時、伊澄は目に入った後ろ姿に考えるよりも先に声を上げた。
「雫…っ」
雫は何事もなくソファに座っていた。背後から伊澄が抱き締めると、わっ!と声を上げて雫は首元に回った伊澄の腕に触れた。
「び、びっくりした…どうしたの?いっちゃん」
おはよう、と。雫は顔を上げてにこりと笑いかける。その笑顔に胸が締め付けられ、伊澄の腕に無意識に力が入った。