(番外編集)それは麻薬のような愛だった
出産の為の里帰りをした時、共に帰省した伊澄が都内の家に戻る際に渡した第二ボタン。
何年越しなんだと言いたくなるくらい今更であるし必要なければ捨ててくれて構わないと玉砕覚悟で手渡した。
けれど雫は、これ以上ないという程に嬉しそうに受け取ってくれた。その時の伊澄の気持ちは、どんな言葉でも表現できるものではなかった。
「私の、宝物…だから」
雫は再びボタンを巾着の中に仕舞い、大事そうに抱える。
「これを見るとね、嬉しくなるの。いっちゃんの思いが詰まってるみたいで。私の為だけに置いていてくれたんだって、その気持ちが嬉しくて」
「……」
「けど私…元々整理整頓って苦手だから。どこに行ったか分からなくならないように、ずっとここに入れてるの。ここなら絶対に、失くさないから」
確かに、雫は裁縫に使う道具をとても大切に扱っている。作った衣装を捨てずに綺麗に切り離しているのがそれだ。
その大切なもの達の中に、自分の気持ちを入れてくれている。それが何より嬉しかった。
言葉より先に、伊澄は雫を抱き締める。雫も一瞬驚きはしたが、すぐに伊澄の背中へと手を回した。
「ありがとう…雫、」
「…うん」
いじらしくて、愛らしくてたまらない。そんな雫に、この気持ちをどう伝えればいいだろう。どう愛せば、伝わってくれるだろう。
抑えられない思いのままに伊澄は雫に口付ける。小さな耳、甘い香りの漂う首筋、そしてまろい頬を通りの果てに薄く柔い唇に触れた。
「ん、…は、ぁ…」
雫もそれを受け入れ素直に口を開く。控えめに差し出された舌を優しく吸うとぴくりと可愛らしく身体が跳ねた。