(番外編集)それは麻薬のような愛だった

「雫、」

「なあに?」

「…もう一回、今のしてくれるか」

「今のって…」


言いかけた雫は察したのだろう。頬を赤く染めながら、視線を泳がせた。

かわいい。喰みたい。

その熟れた林檎のような頬は舐めたら甘いだろうか。そんなだいぶイカれた思考を彷徨わせていると、雫はそっと伊澄の頬に両手を添えた。

そして優しく引き寄せ、唇に、キスをした。


「!しず、」


全身に熱が集まる。これ以上無いほどに目を開いて雫を見つめると、相変わらず顔は赤いまま雫は照れたように笑った。


「恥ずかしいけど、頑張った」

「…っ」

「嬉しい?いっちゃん」


嬉しいか。そんなもの、答えなんてひとつしかない。


「当たり前、だろ…っ」


雫の胸元に埋めた目元には、涙が滲んだ。

——嬉しいなんて、そんなもんじゃねえ

可愛い。愛しい。愛してる。どんなに愛の言葉を並べても、雫に全部は伝えきれない。


あの夢は、伊澄の中の怯えだ。どれほどの時が経とうが過去の愚行はすぐ背の後ろにあって、いつでも付け入ろうと押し寄せる。

伊澄が渡した第二ボタンは、伊澄にとっては後悔の塊。かつての最低だった自分すらも、雫は受け入れようとしてくれている。

そんな彼女を、どうして伊澄が愛さずにいられるだろう。



襟元を引き、口を這わせて強く吸う。雫の小さな声が漏れると同時、白い肌に赤い華が落ちた。


「い、いっちゃん…服、伸びちゃうよ…」

「んなもんいくらでも買ってやる」


だからどうか、拒まないで欲しい。

胸元に落ちる所有印は、雫が伊澄だけのものであるという証。自分から雫を奪うのはせめて娘だけであって欲しい。そんな自分勝手な願いが込められていた。

いっそこのままドロドロに溶かしてひとつになれたらいいのに。そうすれば、雫はもう二度と離れていかない。

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