(番外編集)それは麻薬のような愛だった
「それにつーちゃん、昨日も誕生日プレゼントだってたくさんお祝いもらって帰ってたもんね。つーちゃんがみんなから好かれる優しい子で、お母さんとっても嬉しいよ」
雫がそう言うと、紬の顔がパァッと晴れやかになる。
「そうなの!でもね、最近よく男子からも好きって言われるんだ〜。あんまり話した事ない他のクラスの子とか、上の学年のお兄さんとか。一緒に遊んだ事もないのになんで好きってわかるんだろう?」
「えっ…」
首を傾げる紬は本当に分からないといった様子で考え込んでいる。
——それって、もしかしなくても…恋愛的な意味、なんじゃ
紬が年齢の割に幼く、異性というものをまるで意識していないのは薄々気付いてはいた。
けれどそういう心の問題は強要するものではないし、紬もいつかそういう感情が自然に芽生えてくるだろうとのんびり構えていたが、失念していた。
紬はあの天城伊澄の娘なのだ。それも外見から何から瓜二つ。
そんな彼女が、モテないわけがない。
「えっと…」
どう返したものか、と雫は悩む。
こと恋愛においてずっと伊澄一筋でモテからは縁遠かった雫に教えられる事は無い。
今でこの状態ならこれからもっと紬に想いを寄せる子は増えてくるだろう。
その時に彼女がどういった言動を取るのが正しいか、やはり親としては伝えておかなければ。
「つーちゃん、あのね…」
雫が悩みながらも言葉を選んだ時、丁度車が信号で停車した。