(番外編集)それは麻薬のような愛だった
意味も分かっていないのに自信満々に、溌剌と返す紬。そんな娘の姿に雫は伊澄と顔を見合わせ共に目を開く。
けれどすぐに、互いに堪えきれなくなって笑った。
「…確かにな。紬は俺より賢い。なんたって雫の娘だからな」
「い、いっちゃん…!?」
そんな雫の声に重なるように、紬がそうだよ!と声を張り上げた。
「だって世界一優しくてカワイイおかあさんが私のこと1番だって言うんだから、私がいちばんスゴいの!だからぜったい大丈夫に決まってる!」
「つ、つーちゃんまで…」
根拠も何も無い言葉だったが、それでも伊澄は心から嬉しそうに紬に目を向けた。
「…雫が世界一だって分かってんならそれでいい。ちゃんと見る目はあるようで安心したわ」
「ふ、2人とも…!」
両手で頬を包み、赤い顔を隠す。
「恥ずかしいよ…」
心から大好きな2人からの褒め殺しの言葉に悶絶していると伊澄の大きな手が頭に乗る。
その時の伊澄の表情があまりにも柔らかく、そして甘く。熱すぎる熱に溶けてしまうのではと思うほどだった。
「おとうさーん。信号青だよ」
面白くなさそうに冷えた声で言う紬に、伊澄は「悪い」と言って再びハンドルを握った。
そういえば自分も昔、目の前でいちゃつく両親を見てなんともいえない気持ちになったことを思い出す。
——つーちゃんの前では控えなきゃ…
熱に浮かされた顔を冷ますように手で仰ぎながら、雫は外の景色に目を向けた。