(番外編集)それは麻薬のような愛だった
車がブリーダーが管理する犬舎に到着したのはその約1時間後。我先に車から降りた紬と共にチャイムを押し、職員から温かく迎え入れられた。
そしてその腕には、生後1ヶ月の小さなトイプードルの子犬が抱かれていた。
「わあ!いちごちゃんだあ!」
紬は目をキラキラさせながら対面を喜び、そして突然ハッとしたように頭を直角に下げた。
「忘れてた!こんにちは!今日はよろしくお願いしますっ!」
ブリーダーの女性は一瞬目を丸くし、そして目元に皺を作りながら破顔する。
「こんにちは。紬ちゃんはとってもお利口さんですね」
「うん!だって今日からわたし、いちごちゃんのお姉さんですから!」
自信満々に言いながらも、その視線は既に彼女が「いちごちゃん」と読んだ子犬に向けられている。
「改めて、本日はよろしくお願いします」
車から降りてきた伊澄と共に並び、雫がそう言えば女性は穏やかに微笑んだ。
「こちらこそ。では中へどうぞ」
建物内へと誘導され、ドアを開ければ広々とした綺麗な玄関の傍に子犬達が集まるスペースが見える。
元気に走り回る小さな子犬達を眺めるように机と椅子が並び、雫と伊澄はそこへ腰掛けた。
一方で紬はいちごの入れられたゲージの前に張り付いており、ずっと子犬にに話しかけていた。
「可愛いですね、紬ちゃん」
にこやかなブリーダーから言われて雫はお礼を返す。
「ここに初めて伺った時からあの子に夢中で。名前も絶対に譲らなかったんです」