【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「昨日の学校の先生ですよね。昨日とは雰囲気が異なって驚きました」
 ランドルフの声は温かく、どこか親しみやすい。
 だが、そのときランドルフの視線とは別の視線を感じ、シアは横目でそっと確認する。
 やはり、そこには王太子の近衛騎士、ジェイラスが立っていた。
 昨日の帰り際、『付き合ってほしい』と告げたジェイラスの熱い視線が、シアの頭を離れなかった。なぜ初対面のシアに対して、そのようなことを言ってきたのか。理由がわからない。
 だが今は、そのような事実はなかったかのように、彼は無表情でそこに立っている。
「私も、ギニー語は少しはできますが……それも世間話程度ですから。シア先生は、子どもたちに教えるほどの腕前だと」
 ランドルフの言葉に、シアは慌てて首を振った。
「いえ……私も必要だから話せるようになっただけです。子どもたちも、学校を卒業した子は、ギニー国で仕事をする子も多いので……」
 謙遜するつもりが、言葉がどんどん小さくなっていく。こんな場で、自分の能力を過大評価されるのが怖い。失敗したら、モンクトン商会に迷惑がかかる。
< 129 / 375 >

この作品をシェア

pagetop