【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 そんなプレッシャーが、シアの肩に重くのしかかる。
「相変わらず、シア先生は謙虚な方ですね」
「あ、あの……」
 このようなことを王太子相手に言っては不敬かもしれないと知りつつ、シアは勇気を振り絞って口を開いた。
「ここでは私は先生ではありませんので……どうか普通にしていただけると……」
 声が震え、言葉が途切れがちになる。ランドルフの目を見つめるのが怖くて、視線を少し下げた。
「失礼しました、シア嬢」
 その呼び名も慣れないため、くすぐったいような、落ち着かない気持ちが胸に広がった。
「では、ご案内いたします」
 ボブの声が場を切り替え、シアの気持ちがゆるやかに解放された。
 ボブが港を案内し、一行はそこへ向かう。海の向こうのギニー国の荷物を運ぶ船がサバドに到着し、その取引の様子を王太子が見たいのだという。
 モンクトン商会に不正はない。だからこそ、ボブは快く案内を引き受けたのだろう。
 一行は港を訪れた後、サバド各地にあるモンクトン商会の店舗を見て回り、夕方には王太子を招いた晩餐会が控えている。
 シアにとって、今日一日は気の休まる瞬間がない。だが、引き受けた以上、逃げるわけにはいかない。
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