【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「取り押さえろ!」
 ジェイラスの声で、部下たちが一斉に侵入者へと飛びかかり、その自由を奪った。
 しかしそのとき、背後で何かが倒れるような重い音がした。
 ――ドサッ!
「アリシア!」
 彼女が力なく床に崩れ落ちていた。
 ジェイラスはすぐに彼女の側に駆け寄って、その身体を抱き起こす。手に温かく粘つく血の感触が伝わった。
 アリシアはランドルフをかばった。そのおかげでランドルフに怪我はなかったが、アリシアが矢を受けた。
「おまえたち、侵入者を拘束して領主館へ連れていけ。地下に牢があるはずだ。そこにぶち込んでおけ」
 怒りに満ちていたジェイラスだが、その感情を言葉に乗せるようなことはしなかった。
 領主館の地下には、どの地方でも犯罪者を閉じ込める牢が備えられている。
 アリシアを抱き上げたジェイラスは、急いで階下へと向かう。とにかく彼女の手当をしなければ。
 傷口は幸い浅かったが、彼女の額に浮かぶ汗と異常な発熱、そして微かに震える唇。恐らく、矢の毒によるものだ。
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