【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 その人物が目の前に現れ、シアはキャメル色の目を見開いた。朝の光が窓から入り込み、彼を明るく照らす。
「シア嬢。あなたに怪我をさせてしまったのは、我が騎士団の落ち度です。その怪我では子どもたちに剣術を教えることができない。だから責任をもって、俺が子どもたちに剣術を教えるようにと。それが王太子殿下からのお言葉です」
 そう言って深々と頭を下げたのは、ジェイラスだった。
「は、はい……」
 シアは戸惑いを隠せない。何よりもジェイラスは王国騎士団の中でも、王太子付きの近衛騎士だという認識がある。そのような人物が、なぜここで子どもたちに指導をするのか。
 だが、その戸惑いは院長の明るい声によってかき消される。
「シア先生。聞きましたよ? 暗殺者に狙われた王太子殿下をかばって怪我をされたと。無理をしないでくださいね」
 院長の声は温かく、心配に満ちていた。その柔らかな眼差しに、シアは少し肩の力を抜く。
「はい。大した怪我ではありませんので……」
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