【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
第五章

1.

 馬車から降り、乾いた空気が頬に触れたときは、ジェイラスの心には懐かしさが込み上げてきた。サバドの潮風とは異なる、王都特有の風のにおいがする。
 シアは通された部屋に目を白黒させている。彼女だって三年前までは王都で暮らしていたはずなのに、まるで初めて訪れた場所のように、身体が小刻みに震えていた。記憶がないのだから仕方あるまい。
 ヘリオスは「しゅごいね~きれいね~」とはしゃいでいる。
「ここでは俺と一緒に暮らすことになると思うが」
 ジェイラスの言葉に、シアの肩が跳ねた。
「え、と……ここで?」
 シアたちを案内したのは、王城内にあるジェイラスの私室だ。何度もアリシアを連れ込んだ部屋だというのに、ソファに腰をおろしヘリオスを抱っこしたシアは、きょろきょろと室内を大きく見回した。
「ああ、ここでもいいし、別邸でもいい」
 ジェイラスが落ち着いた声で答えたが、シアの眼差しが次第に驚きのものへと変化する。
「あの……私、ここを知っているかも……?」
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