【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
 いつの間にかシアの腕から逃げ出したヘリオスは、拙い足取りで室内を歩き回っていた。
「思い出したのか?」
 シアの言葉にジェイラスは興奮を覚え、彼女の肩をがしっと両手で掴む。
「あ、いえ……思い出したわけでは……ただ、この部屋を知っているような気がして。それに、王城も……来たことないはずなのに……懐かしいような、そんな気がするのです」
 キャメル色の瞳が不安そうに揺れ、ジェイラスを見つめた。
「それが、君の記憶の曖昧なところなのだろう。失われた記憶は、アリシア自身に関することだけ。学んだこと、知ったこと、そういった内容は身についている。だからここにいたときの記憶は完全に失ったわけでなく、部屋を見たことで、その奥に眠る記憶を思い出そうとしているのではないか? この場所は、君もよく来ていたところだ」
「私がここにいた? ジェイラスさんのこの部屋に?」
「ああ」
 ジェイラスは短く答えたが、ヘリオスがいるため、それ以上のことを口にするのは躊躇われた。
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