【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「アリシアもゆっくりと休んでくれ。もし、お茶を飲みたいときは、そこに湯沸かしと茶葉がある」
 室内の隅に置かれているワゴンを指差した。彼女はコクンと頷く。
 部屋を出たジェイラスが向かう先は、ランドルフの執務室だ。例の暗殺者の件も報告しなければならない。先にホーガンから情報は聞いているだろうが、ジェイラスの口から報告する義務がある。なによりもランドルフがジェイラスをサバドに置いていったのは、暗殺者の尋問と情報収集が目的だったからだ。それが失敗に終わった。
 サバドから戻ってきたばかりで平服姿のジェイラスだが、ランドルフはそれで文句を言う男ではない。
 執務室の扉をノックすると、中ではランドルフが秘書官たちに指示を出していた。書類の山とインクのにおいが漂う部屋に、緊張感が満ちている。
「もういい、下がってくれ」
 ジェイラスの姿を捉えたランドルフが秘書官たちに言うと、彼らは一礼して退出した。
「ジェイラス・ケンジット。ただいま戻りました」
「おかえり、ジェイ。それで?」
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