【完結】記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
「まぁ……近衛騎士団も複雑なんだ。俺は団長だが……副団長が実質のトップだしな。俺はむしろ、ランドルフ担当だ」
 副団長のチェスターはジェイラスの父親と同じ年代で、本来であれば彼が団長になるものだと誰もが思っていた。
 だが、ランドルフが国王になる未来を見据え、ジェイラスの父親、チェスター、国王までもがジェイラスを団長に推したという。
 どうやらランドルフは、ああ見えて問題児、いや破天荒らしい。それを押さえるのがジェイラスの役目とのこと。
 だからジェイラスをサバドにおいて、ランドルフが帰ってきたときには、チェスターも国王も頭を抱えたとか。
「久しぶりにチェスターの顔を見たが、額が広くなった気がした」
 それは苦労によって髪が抜けたとでも言いたいのだろうか。ジェイラスの軽口に、シアはくすりと笑みをもらす。
「俺としてはシアと一緒にいられたし、殿下と離れられたし。羽根を伸ばせた一か月だった」
 悪びれる様子もなくジェイラスが言うものだから、シアも愛想笑いで答えた。少しだけチェスターに同情してしまう。
 騎士団に戻ったジェイラスは多忙を極め、夕食も一緒に取れない日が続いた。
 ヘリオスから「ラシュは?」と聞かれ「お仕事が忙しいみたい」と答えると同時に胸が苦しくなった。
 夜遅く、ヘリオスが眠ってから、ジェイラスはこっそりと部屋に戻ってくる。
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