主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜
お母様の葬儀当日、数日前初めて袖を通した深い黒を基調とした喪服が、ベッドの上に丁寧に広げられていた。
「……ついにこの日が来たのね」
私は小さく息を吐き、前を向く。
パクシーや侍女たちが丁寧な所作で髪をまとめ上げ、ドレスに袖を通すのを手伝った。絹の生地が肌を撫でるたび、心に冷たい緊張が走る。
「ラエティティア様、準備が整いました」
パクシーの言葉に頷こうとしたとき、扉がノックされる。
「ラティ、入っていい?」
ディアの明るくも少し沈んだ声が聞こえた。
「ええ、どうぞ」
入ってきたディアは黒と紺の正装に身を包み、見慣れた笑顔の奥にわずかな影を宿していた。
「……似合ってるわ。喪服なのが残念なくらいに」
「ありがとう、ディア。貴方こそ、綺麗よ」
ほんの一瞬、私達の間に柔らかな沈黙が流れる。それは悲しみを共有する者だけが持てる、静かな信頼だった。
「……怖くはない?」
ディアの問いに、私は鏡越しに目を伏せた。
「怖いというより、重いわ。このドレスも、私の立場も」
「うん、分かる。私も最初はそうだった。でも、ラティはちゃんと歩けるよ。だって、貴方は伯母様の娘なんだもの」
「……ありがとう」
ディアは小さく微笑んで、ラティの手を取る。
「行こう。もうすぐ始まるわ」
その手のぬくもりが、私の中で凍っていた何かをほんの少しだけ溶かした気がした。
ドレスの裾を揺らしながら、私は静かに歩き出す。
沈黙の中に、覚悟の音だけが響いていた。
「……ついにこの日が来たのね」
私は小さく息を吐き、前を向く。
パクシーや侍女たちが丁寧な所作で髪をまとめ上げ、ドレスに袖を通すのを手伝った。絹の生地が肌を撫でるたび、心に冷たい緊張が走る。
「ラエティティア様、準備が整いました」
パクシーの言葉に頷こうとしたとき、扉がノックされる。
「ラティ、入っていい?」
ディアの明るくも少し沈んだ声が聞こえた。
「ええ、どうぞ」
入ってきたディアは黒と紺の正装に身を包み、見慣れた笑顔の奥にわずかな影を宿していた。
「……似合ってるわ。喪服なのが残念なくらいに」
「ありがとう、ディア。貴方こそ、綺麗よ」
ほんの一瞬、私達の間に柔らかな沈黙が流れる。それは悲しみを共有する者だけが持てる、静かな信頼だった。
「……怖くはない?」
ディアの問いに、私は鏡越しに目を伏せた。
「怖いというより、重いわ。このドレスも、私の立場も」
「うん、分かる。私も最初はそうだった。でも、ラティはちゃんと歩けるよ。だって、貴方は伯母様の娘なんだもの」
「……ありがとう」
ディアは小さく微笑んで、ラティの手を取る。
「行こう。もうすぐ始まるわ」
その手のぬくもりが、私の中で凍っていた何かをほんの少しだけ溶かした気がした。
ドレスの裾を揺らしながら、私は静かに歩き出す。
沈黙の中に、覚悟の音だけが響いていた。