主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜
「今の貴方が、私の世界にいてくれてよかったと、そう思っています」

ステンドグラスの欠けた色が、彼の頬を淡く照らす。
それはどこか、夕暮れのような、懐かしさを伴った光だった。

「……ふっ」

彼は鼻で笑った。
けれど、その笑みはいつもより少しだけ優しくて、
ほんの少し――照れているようにも見えた。

その仕草を見て、私は確信する。

本来の彼を知らない私だからこそ、今の彼を見ていられる。

そして、彼もまた、過去と現在の狭間で、自分を取り戻そうとしているのだと。

だから私は、そっと言葉を添えた。

「今の貴方のこと、もっと知っていきたいです。――ゆっくりでも、いいですか?」

月の光が、ふたりの間に落ちた。
沈黙はやさしく、心を包むように流れる。

彼が何も言わなくても、その背中がほんの少しだけ力を抜いたことに、私は気づいていた。
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