主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜

閑話〜騎士になった子犬〜

***

王宮は、想像していたよりもずっと静かだった。
いや、静かすぎるのだ。屋根も壁もあるのに、どこか落ち着かない。
誰も怒鳴らないし、罵らない。
目を合わせたら、侮蔑の視線を投げてくる人間もいなかった。

俺はラエティティアの後ろを歩きながら、じっと足元を見つめていた。

「……そんなに緊張しなくていいのよ」

振り返った彼女が、ふっと微笑んだ。

その笑顔に、また胸が少し痛くなる。
たった一度、手を引かれただけで、自分の中の何かがどんどん形を変えていくのが怖かった。

「これから、貴方は私の“騎士”になる。でも、いきなり剣を振らせたりはしないわ。まずは勉強と、礼儀作法ね」
「……勉強?」

眉をひそめる。
教養なんて、そんなもの、生きるのに必要だと思ったことはなかった。

けれど彼女は、ゆっくり首を振った。

「剣も礼儀も、大切。でもそれ以上に、貴方自身が“自分を信じられること”が一番大事よ」

信じる?自分を?
そんなもの、信じられるはずがない。
信じて裏切られて、捨てられて、何度壊れたと思ってる。

だけど、彼女は真っ直ぐにそう言った。

だから俺は、何も言えなかった。
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