主人公の座、返してもらいます!〜私が本物の主人公だったらしいので華麗に人生を取り返してみせようと思います〜
それからの日々は、戸惑いの連続だった。

朝は太陽より先に起き、文法や歴史を教わる。
午後には剣術の構えを学び、夜は騎士団の訓練場で実戦の模擬演習。

すべてが未知で、すべてが眩しかった。

ラエティティアは決して過保護にはしなかった。
手を差し伸べるときはある。でも、歩くのはあくまで俺自身。

彼女は、“守る”のではなく、“進ませて”くれた。

「“主”を守るのは騎士の誇り。
でもそれ以上に、自分の誇りを忘れないで。貴方は、貴方でいていい」

――ああ、また。
その言葉一つが、心に沁みる。

俺は、何者かになれるのかもしれない。
この手に剣を握って、誰かを守る未来があるのかもしれない。

……いや、違う。

俺が守りたいのは、一人しかいない。

彼女を見つけてくれた日から、俺の時間はずっと、彼女を中心に回っている。

だから、学ぶ。戦う。強くなる。
彼女の“騎士”でいるために。

彼女の隣に立つために。

そして――誰にも、彼女を奪わせないために。

「俺は、お前の“騎士”になる。絶対に」

誰に誓うでもなく、誰に聞かせるでもなく。
その小さな誓いは、白銀に輝く月の下、誰にも知られずに強く胸に刻まれた。
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