呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

 麻袋を手押し車に積んで運ぶため取りに行こうとすると、帰ろうとしていた2人が誰かと話して立ち止まっている。
 
 またエスティリオが来ているのね。

 魔塔主の仕事はすごく忙しいのでは? と思うのだが、就任して以来エスティリオは、週に何度も農場へやって来ている。そんなに薬草栽培が気がかりなのかしら、と不思議でならないが、なるべくエスティリオに会いたくないラシェルとしては悩ましい事態だ。
 
「二人は今から休憩に行くところ?」
「はい。片付けを終わらせて、お昼休憩をとるところです」
「そう。なら午後の仕事は遅れてもいいから、貝殻洗いを手伝ってあげてくれ。もしかしたら薬草を効率的に栽培するのに、とても有効な手段かもしれないからね。農場長には俺から言っておくから」

 エスティリオが頬にエクボを作りながら、2人にニッコリと笑いかけると、ナタリーとアルベラは頬を赤く染めている。
 
「わっ、分かりました。それでは手伝って参ります」
「頼んだよ」

 3人のやり取りを見ていたラシェルに気が付いたエスティリオが、小さく手を振ってきた。
 ぺこりと頭を下げて御礼をすると、「頑張ってね」と口パクしてから去っていった。
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