呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
仕事をしていれば気が紛れるかと思ったのだけど……。
せっかくアルノートに紙を追加で貰ったのに、なかなか筆が進まない。
昼間の庭園の様子が目に焼き付いて、余計なことをごちゃごちゃと考えている。
「アルノート様にまで気を使って頂いて……何をやっているのかしら」
長い吐息を漏らしたところで、コンコンッとノック音が聞こえてきた。
「エル、入ってもいい?」
エスティリオ?
ドアを開けると案の定、エスティリオが立っていた。
「どうしたの」
「少しエルと話したいと思って。こっちに座って」
ポンポンッと、エスティリオの隣に座るように促された。
「せっかくの帰郷なのに、不自由な思いをさせてごめん」
「いいのよ。正直言ってあまり懐かしい感じとかしないの。すぐそこにある庭園だって、まじまじと見るのは今回が初めてよ。ずっと与えられた離宮から出られなかったから……。だからこうして引きこもるのもお手の物、というわけ」
気にしないようにと笑ったつもりが、逆効果だった。エスティリオは悲しげに顔を歪めている。
「本当にごめん」
「そんなつもりで言ったんじゃないのよ。それに、一生ここに引きこもらなきゃいけないわけじゃないでしょう?」
「もちろんだよ。明後日には解放してあげるから」
「明後日? 帰るのは3日後よね?」
7日間の日程で、今日はまだ4日目。あと3日あるはず。
「明後日、皇帝主催のパーティーがある。国内はもちろん、各国の王族や主要な貴族も大勢招かれているそうだよ。そこにエルも使用人として紛れ込んで欲しい」
「え?」
「姿が見えなくなる魔法をかけてと思ったけど、恐らくそれは無理だと思う。皇宮全体に、姿現しの結界が貼られているから」
「それはいいけれど……エスティリオ、大丈夫なの?」
何をするつもりなのか、きっと事前には話してくれない。だからラシェルに出来ることはもう1つしかないと決まっている。例え怖くて、不安に押し潰されそうでも。
「いえ、あなたを信じるわ」
「ありがとう。俺が魔塔主になろうと思ったのはエルの為だけど、でも、生半可な気持ちで引き受けたわけじゃない。私情は抜きにして、魔塔主としての責任は果たさないといけない。だから俺が何をしても嫌いにならないで」
「エスティリオを嫌いになるわけないでしょ。それよりも……私のために魔塔主になったって言うのは……?」
そんな話は初めて聞いた。エスティリオは珍しく照れているのか、耳の端がほんのり赤く染まっている。