呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

「エルほど働き者で賢く品のある女性なら、それでも欲しいって人は現れそうなものだけどね」
「ふふっ、魔塔主様は私を買いかぶり過ぎですよ。……それで、20歳を迎える頃にはいよいよ居ずらくなってしまって、家を出てきました」
「なかなか大変だったんじゃない? ここまで来るのは」
「そうですね。住み込みの皿洗いや掃除の仕事をしながら何とかと言ったところで。放浪生活中、たまたま魔塔で使用人をしていたという方がいて、他所で働くより余程、待遇がいいと仰っていたものですから。魔塔なら尚更、魔力がなければダメなのかとも思いながらも来てみましたが、運良く雇い入れて頂きました。先代の魔塔主様には感謝してもしきれませんわ」
「マステーユ地方かぁ。何となくの場所しか分からないな。どの辺にあるの? 例えばこれが帝国で、ここが魔塔主領として……」

 エスティリオは近くにあった紙とペンとを作業台へ持ってくると、サラサラと簡単な大陸の図を描き始めた。

「この図で言ったらどの辺り?」
「そうですね……ここが帝都だとしたら、ここにノール河とラファール川が流れていて、それからこちらがマラレア山脈。その南側のこの辺りですね、マステーユは。私がいた村はその中でも東側の……?」

 ラシェルが渡されたペンで書き加えながら場所を説明していると、エスティリオは薄らと笑いながらこちらを見ていた。その視線に気がついたラシェルは、何かおかしな点でもあるのかと首を傾げる。

「もしかして地図に、どこか間違いでもあるのでしょうか?」

 アカデミーを卒業してから随分経つ。勉学をしなくなって久しいので、もしかしたら間違いがあるのかもしれないと聞くと、エスティリオは笑いながら答えた。

「いいや、完璧。むしろ、完璧過ぎるくらいにね」
「そう……ですか……」

 何故か心臓がバクバクと音を立て、背筋に冷や汗が流れた。
 自分が失敗を犯しているのではないかという、嫌な予感。
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