呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

 それにしても、エスティリオはどうしてあんな山奥にいたのかしら?

 間一髪の所を助けて貰って良かったと思う一方で、やはりそこは大きな疑問だ。
 偶然通りかかったというのは不自然すぎる。
 農場長には出掛けると言ってきたが、詳しい調査ルートまでは教えていないし、そもそもラシェルだって大体の行き先を決めていただけ。薬草を探しながら、その場その場で道を選んでいたのだから。

 付けられていた……?
 まさかね。そんな暇では無いわ。

 仕事が山積みの状態で、薬草栽培士の使用人の後をつけるほど暇では無い。
 そういえば、山賊にカバンを漁られた時に出された記録用紙はどうなったのだろう。それに魔晶石や洋服もだ。
 今回の外出でせっかくとった記録が無くなってしまうのは惜しい。とくにマルガロンの調査記録は今後の栽培に重要なものだ。
 他の持ち物について言えば、魔晶石は先月買い換えたばかりで、ラシェルの懐はだいぶ寂しい。さらに着替えの服も無くなったとなると、次に貰う給金だけでは到底足らない。
 もしかしたら何ヶ月か、魔晶石無しの生活を覚悟しなければならないかもしれない。そうなるとランプすら付けられないラシェルは、不便な生活を余儀なくされる。 
 エスティリオが戻ってきたら、色々と聞いてみなくては。

 考えを巡らせながらゆっくりと湯に漬かっている内に、のぼせてきたのか頭がぼうっとしてきた。これはまずいと思ったラシェルは湯船から上がって、棚に置かれていた布で体を拭いた。

「服……どうしましょう……」

 着替えを持っていない事に、今更ながら気が付いた。
 かと言って先程まで羽織っていたローブに、もう一度袖を通すのは気が引ける。あのローブは魔塔主のみが着用を許された服であって、ラシェルがおいそれと身につけて良いものでは無い。

 エスティリオが戻ってきたら、誰かに服をラシェルの部屋から持ってきて貰うよう頼めないか、聞いてみるしかない。
 脱衣所には湯上がり後、休めるようにか、長椅子が置いてある。
 エスティリオがノックもせずに入ってくる事など、まずないだろうと踏んだラシェルは、とりあえず布を体に巻きつけて、座って待つことにした。

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