呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

「私には他に想い人がおります。他の方からの好意は受け取れないのです」

 エスティリオがエルを好きなのなら、遠ざけなければ。
 ただの雇われ農民が魔塔主夫人になれるとは思っていないが、愛人くらいならばされるかもしれない。
 ラシェルの知るエスティリオなら、他に想いを寄せる人がいる女性を、無理に妾にしようなどとは思わないはずだ。
 先手を打って嘘をつくラシェルに、エスティリオは目の色を変えた。

「それって誰?」
「恐れながら、私だけの秘密にさせてくださいませ。私のような者が想いを寄せていると万が一にでも知られたら、恥ずかしさで表に出られなくなってしまいます」
「ふぅん、エルは俺より、その人の方が惹かれるんだ」
「ふふっ、魔塔主様の好みと同じように、好みは人それぞれですわ。私よりも美しく、気立ての良い女性なら沢山おりますでしょう?」
「そう? エル以上の人なんて、他に見当たらないんだけど」

 エスティリオがこんな情熱的な人だとは知らなかった。
『エル』に言っているのか、それともラシェルが言われているのかよく分からなくなり、不覚にも心臓がドクンと飛び跳ねる。

 ドキドキしている場合じゃないわ。
 正体が知られたら、生きてはいられないのだから。

「今は熱に浮かされているだけでしょう。後で冷静になってみれば、あれは何だったのだろうと思う日がやってきます」
「そうかな。好きになってから結構経つんだけど」

 ボソリと口にしたエスティリオの呟きは、ラシェルの耳にはよく聞き取れなかった。
 何と言ったのかと首を傾げるラシェルに、エスティリオは「まあいいや」と天井を仰いでいる。

「要はエルを振り向かせれば良いだけだし」
「魔塔主様……?!」
「逃げられるなんて思わないでよ。俺、どこまでも追いかけるから」

 エスティリオの恋心に油を注いで、余計に燃え上がらせてしまったようだ。
 口をパクパクと動かすが、言葉がうまく出てこない。
 諦めてもらおうと思ったのに……。

 ニコニコとしながら猟奇的な言葉を吐くエスティリオを、ラシェルはただ曖昧な顔で笑い返すしか出来なかった。
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