呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

 近づけば近づくほどに、エルがラシェルだと確信していく。
 声音は違っても話し方や考え方は変わっていない。姿は変わっても仕草や所作はラシェルのまま。

 貝殻肥料作りを手伝いに顔を出した時、ラシェルは一瞬だけエスティリオの名を呼びかけた。
 ただの使用人ならば、ファーストネームで呼ぼうとすることなどまず無い。『魔塔主様』か『ベクレル様』以外の名で呼んでくれるのは、魔塔主候補となる前から親交のある人だけだ。それも魔塔主となった今では、殆どの人が名を気安く呼ぶことを憚り、ファーストネームで呼びかけられることは無くなった。

 あともう少し。

 自分だけが事情も分からず想いを募らせているのが腹立たしくて、意地悪過ぎるかとも思ったが、ラシェルを試すような事もした。

 そもそもエスティリオが柄にもなく魔塔主の座を引き受けたのは、全てラシェルの為。
 卒業の日にラシェルから出自を教えてもらった時から、エスティリオの目標は決まった。
 
 ラシェルの父、カレバメリア帝国の皇帝と同等かそれ以上の力を得る。
 
 その為に己の魔力の強さを恨む日々をやめ、最大限に利用して、ラシェルを皇帝の手から引き離そうと決意したのだった。
 
 魔力が無いと言うだけで冷遇され、存在を否定してしまうには、ラシェルは余りにも惜しい人だ。なによりエスティリオは、出会った時からラシェルをただの同窓生としては見ていない。

 たおやかで美しい人。それでいて芯があり、しっかりと自分の足で立とうとする人。
 薬草畑で出会ったあの日から、無意味なエスティリオの人生に意味を持たせてくれた人。
 それがエスティリオから見たラシェルという人。

 魔力があるのが当たり前のこの世界においてでも、エスティリオの魔力は尋常ではなかった。
 制御しきれない程の魔力を持って生まれたエスティリオは、家族にとって厄介者。
 家の中の物を壊すのは日常茶飯事で、外出先でも魔力を暴走させてしまうものだから、部屋から出して貰えず軟禁状態にあった。
 父や姉はもちろんの事、母親でさえもエスティリオに接する時は腫れ物を扱うかのようにビクビクとされ、顔色を伺われる毎日。そんな日々にフラストレーションが溜まったエスティリオは、ある日家を吹き飛ばしてしまった。
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