呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
今でも忘れない。
瓦礫と化した家と、恐ろしい化け物でも見るかのような家族の顔。
致命傷は負わなかったものの、怪我をした家族はエスティリオを怖がり、とうとう追い出された。
追い出されたと言っても家から放り出された訳ではなく、ツテを頼り、魔法の腕にある程度覚えのある人の元へと預けられた格好だ。
その人の元で魔力の使い方を学び、魔法を上手く操れるよう努力してみたが、成果はなかなか現れず。一番初めに師と仰いだ人から呆気なく見捨てられた。
その後も同じように魔法に長けた人の元を点々とし、最後に紹介されたのが前魔塔主のバスティエンヌ・アルマン・ライエだった。
『魔塔のアカデミーに通いなさい。その魔力をものにして上手く操れるようになれば、私は後釜の心配をしなくても良さそうだわね』
人の気も知らず、ライエは目尻にシワを寄せてカラカラと笑っていた。
アカデミーに入学してもエスティリオは変わらずで、校舎の一部を破壊したり、教師を吹き飛ばしたり、時には生徒に怪我を負わせてしまうこともあった。
自分の周りにある全てを壊して傷つけるこんな力、無くなってしまえばいいのに。
無くせないのなら、自分なんて居なくなってしまえばいい。
問題を起こしてばかりの自分に嫌気がさし、強い虚無感に襲われていたエスティリオの前に現れたのがラシェルだった。
『ほら私、魔力無いでしょ?』
本人の言う通り、他人の魔力に敏感なエスティリオでさえ、ラシェルの中に全く魔力を感じられなかったので驚いた。強い弱い、多い少ないの違いはあれど、ここまで無い人がいるだなんて。それも、魔塔のアカデミーに。
欠陥品って本当にいるんだ。
失礼ながらにラシェルを見ると、穏やかな笑みを浮かべて話しかけてくる。
柔らかい口調と気さくな人柄に心がほぐれたエスティリオはいい所を見せようと、これまでの失敗を忘れて魔法を使ってしまった。
ミルクを上から降らせてかけるのはダメだと知り、挽回しようとして力を暴走させ、結果はいつもの通り。
道具は散らかり、集めてあった雑草もバラバラに。ラシェルが手塩にかけて育ててきたであろうカモミールに至っては、なぎ倒されている。
ああ、この人からもまた、あの目で見られてしまう。
怯えて、迷惑そうにする目で。