呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

3. 度々現れる魔塔主様

 エスティリオが新しい魔塔主に就任してから5日目。ラシェルが所属する農場には特に変わったことも無く、平穏な時間が流れている。
 当然と言えば当然の事で、農場に魔塔主がわざわざやって来ることなどこれまでほとんどなかったし、来たとしても話し掛ける相手は責任者であり、ただの薬草栽培士に話し掛けることなどまず無い。
 ラシェルが就任式の日に感じた不安や恐怖はすっかり薄れ、毎日繰り返される作業に取り掛かった。
 土を耕して種を撒き、肥料をまいて観察して。就任式の日に撒いたイワハエネトルの芽が、早速幾つか生えてきていた。

 やっぱり湿った岩壁に生える草だから、保水力の高い土に植えて発芽させるのが良いみたいね。

 よしよし、と小さなイワハエネトルの芽を愛でていると、農場にいた使用人達がいっせいに頭を下げはじめた。
 誰が来たのかと考えるまでも無い。
 仕事中でも頭を下げなければならない相手など、極限られているのだから。
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