呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
「皆、気にせず作業を続けてくれて構わないから」
魔塔主に声をかけられ、一人、二人と顔を上げて作業を再開している。
就任したばかりだから、各部署の視察でもしているのかしら。
不安になる必要は無い。農場をざっと見て回り帰るだろうと高を括り、手にしていた記録用紙にペンを走らせる。
背、すごく伸びたのね。
気にしてはいけないとは思いつつも、ラシェルの目は自然とエスティリオを追いかけてしまう。農場を案内する責任者の説明に耳を傾けているエスティリオに、昔の彼を重ねた。
成長期の真っ只中だったエスティリオは、会わなかった8年の間にグンと背が伸びているが、パッチリとした瞳の可愛らしさは相変わらず。
でもスラリとした首筋には、以前は無かった喉仏が浮かび上がり、骨格もずっと男らしくなっているのが、なんともむず痒い気持ちにさせられる。
チラチラとエスティリオを盗み見ては、その成長ぶりに感動していると、バチンっと目が合った。今度は気がするではない。はっきりと、だ。
いけない。つい見つめすぎてしまったわ。
自分の主人に失礼な態度をとっていたことにようやく気が付いたラシェルは、慌てて目線を逸らした。
皇女だった頃ならばこういう時、気軽に話しかけに行けたのに、平民となった今はそうはいかない。
主人に嫌われれば即クビになる事だって有り得るのだから、もっと慎重になるべきだったのに。
目線を逸らし、ただ気まずく立っていることしか出来ない。