呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
エスティリオが馬鹿にされたような気がして言い返してしまいたいが、農村の出という設定で使用人だったエルが口を出すのは怪しまれる。
ギュッと拳を握って耐えると、ブランシャールも話に加わってきた。
「まあなぁ、魔法の腕は前魔塔主のライエ様も舌を巻く程桁並み外れの実力者らしいが、魔塔主として必要な能力はそこだけじゃない。指導者としての資質さ。つまりついていきたくなるか、従いたくなるかって事だが……」
コホンっとわざとらしく咳払いをすると、ブランシャールは話しを続けた。
「まっ、若すぎるわなぁ。なんでライエ様はベクレル様を指名したんだか。個人的にはベクレル様は次の次にして、もうちょい経験を積ませてからでも良かったんじゃないかと思うがね。諸王や皇帝に舐められるんじゃないかと不安になるよ」
話しを聞いていた魔道士たちが「そうだよな」と頷いている。
「……計画書にご指摘があれば、またお知らせ下さい。私はこれで失礼致します」
「ああ、ご苦労さん」
どうにも居たたまれなくなったラシェルはブランシャールに挨拶をすると、逃げ出すように部屋を出た。
実力で選ばれるからと言って、いい事ばかりではない。
そのことを思い知った。
ほとんどが血筋で決まる王や皇帝は、まだ幼くても継がざるをえなかったり、王の器を持たない者でも玉座につくことは間々ある。
だからどんな生まれかに関係なく、能力や適正で選ばれる魔塔主は、もっと人々から敬服される存在かと思っていたのに……。
――いいえ、その逆だわ。
数いる魔道士の中から選ばれたのだから、余程優れた人物に違いない。そうやって初めから高い期待をかけられてしまうのだ。
まだ20代に入って間もないエスティリオでは、どうしても「青二才」と軽んぜられる。
飛んでもなく険しい道に、エスティリオは足を踏み入れてしまった。
「しっかりするのよ、エル」
自分の努力が認められたと、喜びに浸っている場合ではなかった。
自分が足を引っ張る訳にはいかない。
エルが無能と評価されれば、必然的にエルを抜擢したエスティリオも人を見る目が無いと評価される。
その事を、肝に銘じなければ――。