呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
男性が傷付いた手にもう片方の手を当てると、傷口が見る間に塞がっていく。
傷跡も残らず、ただ血糊だけが手についている。
治癒魔法だわ。
「魔塔に勤める魔道士なら、このくらいの傷は治せて当たり前だろ……ってあんた、欠陥品か」
「薬草栽培研究官のエルと申します。侮辱する気はありませんでした。お気を悪くされたのなら謝ります」
「はっ、レモンが魔塔の官職に就くとか?! 笑えんなぁ」
「薬草の栽培には魔力は必要ありませんので」
「皿洗いですら魔法使える奴いるのに?」
「……」
この感じ、アカデミーに入学したばかりの頃を思い出す。
農場でずっと働いていたのですっかり忘れていたが、優秀だとか高貴だとか言われる集団の中に入ると、よくこうして見下されるのだ。
「おいゲール、突っかかんなって。魔塔主様直々にお選びになったって話しだぜ? 耳に入ったらあとが怖いぞ」
ユベールが男性の肩を叩いて宥めると、アホらしいと小馬鹿にしたように笑った。
「あんなガキんちょの何が怖いってんだよ。ちょっと魔法の腕に長けてるってだけだろう?」
「知らないのか? 今でこそ温厚そうに見えるけどな、アカデミーに入って間もない頃は、よく魔力暴走を起こして大騒ぎだったらしいぜ」
「ぶはっ、魔力暴走なんて誰でも起こせるさ。魔力だけあってコントロール出来ないやつなら誰でもな」
昔エスティリオが言っていた。
『魔力を上手くコントロール出来るようになれば抑えられるし、怖がられることも無くなるだろう』
そう先生に言われたと。
あの頃のエスティリオを知らない人達は、魔力を制御することを覚えた彼の実力を、正しく測れていない。
魔力を感じ取れないはずのラシェルですら、エスティリオから何かしらの力を感じ取れたくらい、彼の力は恐ろしいのに。