呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
エスティリオはラシェルの事なんて、きっともう覚えていない。覚えていたって『一年生の時良くしてくれたお姉さん』くらいだろう。
身分を明かしてアカデミーを去ったが、その後エスティリオから連絡があったことは無い。
まあそれを自分が望んでいたし、察してくれてはいたのだろうけど。
「こんな形で片思いしてしまうなんてね……」
「片思いってぇ?」
「なっ、ナタリー!」
驚いて思わず魔晶石が入った袋を落としそうになった。いつの間にか就業時間を迎えて、ナタリーとアルベラが研究所に入って来ていた。
「あ……いえ、昨日読んでいた小説で主人公が片思いするのよ。その続きが早く読みたくて」
「えー、エルって恋愛小説とか読んじゃうんだ!? てっきり小難しい本ばっかり読んで、娯楽小説なんて読まないと思ってた」
「そんな事ないわよ」
「あたし文字読めないから、読み終わったらストーリー教えて欲しいなぁ」
「こらっ、あんたはいつになったらちゃんと喋れるようになるの?! せめて『教えてください』でしょ」
「いいのよアルベラ。よそよそしくされたら寂しいわ」
ラシェルが官職に就いてから、アルベラからは敬語を使って話されるようになったが、ナタリーはこれまで通りに接してくれる。
「だってさ」
「まったくこの子は」
「それで今日は何する? 草むしりは昨日終わらせたよ」
「今日はこれの種まきをお願い。私が選別したものを袋ごとで分けてあるから、後で分かるようにこの札を立てておいて」
「この前みたく、袋に書いてある模様と同じ模様が書かれた札を立てればいいんだよね?」
予め種袋と木札とに花や鳥などの絵を対応するように描いておいた。これなら文字を読めなくても問題ない。
「そうよ」と頷き返しさらに撒き方を説明すると、2人は早速仕事に取り掛かりに出て行った。