呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
ラシェルが今魔塔に居ることを考えると、その葬儀とやらに遺体はなかったはず。それとも同時期に亡くなった、他人の遺体でも棺に入れたのだろうか。
いずれにしても、関心の無さが伺える。
ラシェルが多くを犠牲にしてでも皇宮から出たいと思うことに、何ら不思議は無い。
報告書にじっくりと目を通すエスティリオに、アルノートは小さく咳払いをした。
「生前、噂にものぼらなかった第5皇女を気になさるとは……何かあるのですか?」
「んんー? まあちょっとね」
言葉を濁すエスティリオに、アルノートがすすっと側に寄ってきた。
「女性は他の女の影を嫌いますから、気を付けた方がいいですよ」
「なんの話し?」
「またまた。前に執務室を訪れてきた女性ですよ。女性ものの服も見繕ってくるよう仰ってきたのも、彼女にあげるためだったのでしょう? 分かってますよ」
にやりと口元を歪ませて「お見通し」とばかりにドヤ顔をしてくる。
そういえばラシェルがここに来た時、お茶を出して対応してくれたのはアルノートだった。
「あんまり変な詮索すると、その口塞ぐよ」
「おお怖い。魔塔主様を怒らせると大変だ」
喉を鳴らして笑うアルノートに、エスティリオは本当に声を出なくしてやった。
口を鯉のようにパクパクさせるので逆にドヤ顔を返してやると、悔しそうな顔をしながら反対魔法をかけて解いている。
「ぶはっ! ほんとに術をかけることないじゃないですか!?」
「このくらいすぐ解けるでしょ。で、この後の予定は?」
「魔塔アカデミーの学長と面会する予定です」
「いいね、アカデミーに行くのは2年ぶりくらいかなぁ」
「何で行かれます?」
「うーん、馬車にしようかな。自分の治める土地と民とをよく見るようにって、バスティエンヌおばあちゃんにキツく言われてるし」
転移魔法ばかり使ってはダメよ!と前魔塔主によく言われたものだ。
『面倒だからと魔法ばかり使っていると、大切なものを見逃してしまうからね』
息をするように魔法を使ってしまうエスティリオは、意識的に魔法を禁じないとならないことを、バスティエンヌはよく分かっていた。
「ライエ様をおばあちゃん呼ばわりする人なんて貴方くらいですよ、全く」
やれやれと呆れ顔をするアルノートは、馬車の手配をしに向かったのだった。