呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
学長との面会を終えたエスティリオは、帰りも大人しく馬車に揺られ、窓の外を眺めている。
歴代の魔塔主から引き継いだこの街と人とを、自分はきちんと治めることが出来るのだろうか。
魔法の才能は誰にも負けない自信がある。
だが、それだけではダメな事も理解している。
魔法の才能に長けているだけなら、ただの魔道士と一緒。最高指導者として領民のみならず、全ての魔力を持つ人々を導かなければならない。
その重圧を嫌という程感じる度に、あの人が傍にいてくれたらと思わずにはいられない。
「ラシェルと俺で足りないものはなくなる、か……」
魔力を持たない人に支えてもらいたいなんて、周りから見たらおかしな話だと笑うかもしれない。
けれどエスティリオにとってラシェルは、魔力以外の全てを兼ね備えている人だ。そしてなにより、ラシェルにも必要とされたい、必要として欲しいと願っている。
「ちょっと待った! 止めてくれ!!」
窓から外を眺めていたエスティリオは、見覚えのある人影を見つけて、御者に止まるよう声を出した。
「どうされました?」
車から出てきたエスティリオに、馬車近くを馬に乗って付いてきていたアルノートが寄ってきた。
「ちょっと寄り道」
「ええ?!」
困惑するアルノートを尻目に、エスティリオは図書館から出てきた女性に声を掛けた。
「エル」
「魔塔主様? いつも意外なところでお会いしますね」
「仕事で外出してきて、馬車の窓からエルが見えたからさ。エルは図書館から帰るところ?」
「はい、そうです」
「ならエルの時間を少し俺にくれない? そこのケーキ屋が美味しいって話を聞いてるんだけど、男一人で入るのは勇気いるから」
「ベクレル様」
曳馬をして追いかけてきたアルノートが、「次の予定があります」と目で訴えかけてくる。察しのいいラシェルの事だから、アルノートの言いたいことは分かるだろう。
それに負けじとエスティリオは、アルノートを牽制する。