呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
萎れて謝るエスティリオにラシェルは笑ったかと思うと、また、顔を強ばらせた。
「魔塔主様は……呪いの解き方もお詳しいですよね」
「まあ、一応。ありとあらゆる魔法と呪いと、その解き方も知っているつもりではあるよ」
「やはり禁書と呼ばれる本までお読みになって、勉強されたのですか」
こくり、と唾を飲み込む音でも、ラシェルから聞こえてきそうだ。
「今日図書館へ行ったら、禁書があると言う部屋のドアが目に入ったものですから」
「ああ、あそこね。あそこの本も全て読んだよ」
ラシェルが何を求めているのか、もう少しで分かりそうな気がする。
「入りたいの?」
「え?」
「あの部屋に」
互いに見つめ合ったまま、何秒過ごしただろう。カタカタと車輪の音が規則正しく聞こえてくる。
「許可、出そうか?」
「どうして……どうして私に、そこまでして下さるのですか」
「なんだ、まだ伝わってなかった? 好きだからだよ」
ラシェルは今にも泣き出しそうな顔を隠すように、俯いてしまった。
ふうっと一つ息をついて無理矢理気持ちを切り替えたのか、諭すように話し掛けてきた。
「婚約かなにかなさっているならまだしも、片思いしているだけの相手にそうホイホイと、大切なものの許可を与えるべきではありませんよ」
片思い……。
ラシェルに改めて言われて、体が一気に熱くなる。
その訳が悲しいからなのか、怒りからなのか、それとももどかしさの為なのか、自分でももうよく分からない。
「魔力のないエルが禁書を読んだところで、何になるの」
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。言った後で激しく後悔するくらいなら、言わなきゃいいのに。
ハッと我に返ったエスティリオが謝ろうと口を開くより前に、ラシェルは寂しそうに笑った。
「魔法は使えなくても、魔法を使える方に教えることくらいは出来ますわ」
キィと軋む音を最後に、規則正しく鳴っていた車輪の音が止んだ。
「到着したようですね。本日はありがとうございました。それでは失礼させていただきます」
ドアが閉まり、ラシェルの足音が遠のいていく。
――ドンッ
エスティリオが壁を叩く音だけが、車内に虚しく響いた。