呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
夕方、気分を何とか切りかえたラシェルが黙々と資料の作成に勤しんでいると、慌てた様子でナタリーとアルベラが小屋に入ってきた。
「うひゃー、すっごい雨が降ってきた」
「雨?」
窓から外を伺うと、大粒の雨が降り注いでいる。小屋の屋根に雨がバチバチと当たる音もかなりうるさいというのに、集中しすぎて気が付かなかった。
「二人とも、今日はもうお終いにしていいわ」
「え、いいの? やったぁ!」
雨に少し濡れてしまっているし、どうせもう日は傾いてきている。無理して小屋の中で仕事をしてもらうよりも、今日は早く帰って休んだ方がいいだろう。
「それではお先に失礼します」
「お疲れ様でーす!」
「風邪をひかないようにね」
窓から2人が帰っていくのを見送っていると、木の下に何か生き物がいるのが見えた。
昼間にいた猫かしら?
その割に大きいし、あの猫は黒ではなく薄茶色だったはず。
外へ出てよく見ると犬だった。
「あなた、どこの犬? 飼い主さんは?」
聞いたところで答えられるわけがないのだが、つい口にして聞いてしまう。
犬は鼻ズラを持ち上げてこちらを見ると、「くぅん」と小さく鳴いた。
「こんな所にいたら風邪をひいてしまうわよね……」
迷った末、嫌がらずに付いてきてくれるならと呼ぶと、犬は大人しくラシェルの後を追って小屋へと入ってくる。
「いい子ね。今、体を拭いてあげるから」
全体的に黒くて長めの毛並み。胸元と目の上の一部は赤茶色の毛になってきて、垂れた耳が愛らしい。
大きめの犬なので急に噛み付いたりはしないかと少しドキドキしたが、犬はラシェルにされるがまま、気持ちよさそうに体を拭かれている。
「どこから来たの? これだけ人に慣れているのだから、野良ってことはなさそうよね」
鼻をスンスンとさせて擦り寄ってくる。
かわいい……。
「まあいいわ。雨が止むまでここにいて。私ももう少しここにいるから」
とりあえず適当なお皿にお水を汲んで、犬の前に置いてあげると、ラシェルは仕事の続きに取り掛かった。