呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
「すげぇな。どうやって棘のない品種なんて作り出したんだ?」
「方法自体は至極単純です。時々ある棘無しの個体から種を取って育てる。すると、通常のブラッディミルトスよりも棘無しのものが出てくる頻度が上がります。それを何度も繰り返して、棘無しの品種が出来ました」
「ひぇぇ、気の遠くなるような作業だな」
「はい。何年もかかりました」
すごいなぁ、と声が上がる中、女性が手を挙げた。
「質問をいいですか? 棘無しの個体は捕食反応が無くなるので、獲物を捕まえて養分を吸収するという事が出来なくなってしまいますよね? 」
「ええ、その通りです。ですから野生のものや、通常の育て方をしたブラッディミルトスは、大きく育つ前に枯れてしまいます」
報告書を既に読んでいるブランシャール長官だったが、改めて皆に説明するよう促してくれた。
「皆にも分かるよう、続けてくれ」
「棘無しの個体は葉から養分を取れなくなった分、高栄養の肥料を与えて根から吸収させると良いようです。特に大豆の絞りカスや豚か鶏のふん尿から作った肥料が適していることが分かりました。恐らく、肉や血の元になる成分を多く含む肥料が良いということでしょう」
「ああ、なるほど。牛や馬は植物しか食べないものね」
「そうです。他の植物では考えられないほどたっぷりと肥料を与えなければならないですが、農場では育てる時に、わざわざ繁殖させたネズミをブラッディミルトスに捕食させていたので、コストも手間もずっと抑えられるかと思います。それからもう一つ分かってきたことが」
ラシェルは近くにあるブラッディミルトスの葉を一枚もぎ取ると、自分の手に切りつけるようにして葉を動かした。
「うわっ、ちょっと!! ……ってあれ? 切れてない?」
改めて傷が出来ていないのがよく見えるように、手を前に差し出して見せた。
「棘無しの品種をずっと育てていると、今度は鋭くない葉を出すことが分かりました。恐らく根から十分な栄養を摂取できる状態が続くと、葉で捕食する必要が無いためではないかと考えています」
「うぉぉ、それ最高だな! 刺してこないわ切れないわで、ずっと使いやすくなる。魔力無しのくせして、あんたやるなあ!」
「ゲール、感心するのはまだ早いぞ」
ラシェルの背をバシバシ叩いてくるゲールに、ブランシャール長官が笑っている。