呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

16. エルとリオ


 トタトタと魔塔近くの石畳の上を歩く黒い犬。
 その姿が一瞬にしてフッと消えたかと思うと次の瞬間には、魔塔のとある部屋の中にあった。
 犬は自分の棲家に戻ってきたことを確認するかのように鼻ズラを持ち上げると、黒い犬がいた場所に一人の男が立っていた。

「呪い……やっぱりそうだったか」

 執務室へ戻ってきたエスティリオに気が付いた侍従のアルノートが、隣にある書庫から出てきた。

「魔塔主が犬に化けて徘徊しているなんて知られたら、なんて言われることやら」
「いいんだよ。犬の姿になっている方が、みんなの素を見れるからね」

 エスティリオがそのままの姿で巡視しても、「魔塔主が来た」と身構えられてしまうので、普段の仕事ぶりを見れない。犬に化け、何食わぬ顔をして歩き回る方が良いのだとここ最近気がついた。
 と言っても、犬に変身し始めたのは巡視の為ではない。ラシェルの秘密を知る為だ。

 ラシェルとティータイムを楽しんだあの日の翌日、謝りに行こうと研究所へ向かうと、ラシェルが猫に話し掛けているところに遭遇した。
 普段なら絶対に口にしないような内容も、猫には気を許して喋っている。
 そのままナタリーとの会話を盗み聞いていれば、ラシェルは犬の方が好きだと言った。

 もしかすると犬になら、心の内を話してくれるかもしれない。

 そう考えたエスティリオは犬の姿に変身して、ラシェルに近付くことにした。
 期待通りラシェルは、何度も姿を現し懐いてくる犬に名を与え、食事を与え、日々の出来事やちょっとした悩みなんかも話して聞かせてくれた。
 エスティリオが一番聞きたかった、エルが何故、ラシェルであることを隠しているのか。その部分についてはなかなか話してはくれなかったが、根気よく待っていた甲斐あってようやく今日聞き出すことができた。
 呪われた主人公が出てくる小説、禁書を読みたい理由、そして本来の身分を明かさない理由。
 それらを総合して鑑みるに、恐らくラシェルは呪いにかけられているのだろうと予想し、先程の話しで的中だったことが確定した。
 あとはどんな魔法を使い、どう呪われているのかを知る必要がある。
 ラシェルの中に極わずかな魔力がある事や、頑なに素性を明かさないことから、こちらも大体の予想はついている。あとはどうやって確かめるかだ。
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