呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
ちょくちょくぼやく割に面倒見のいいアルノートは、自分の主人の為に早速ハーブティーを入れてきてくれた。
「エル殿に貰ったハーブティーはこちらで最後です」
「……そう」
ラシェルからオリジナル配合のハーブティーを貰ってからというもの、無くってはラシェルの元へ行き、新しく用意してもらっていた。
それも馬車でのあの一件以来はずっと控えていたので、とうとう底をついてしまった。
「あー、人生の先輩として、妻と2人の子を持つ男としてひと言申し上げても?」
「なに」
「自分が悪いと思うなら、さっさと謝っちまえ。ってことですよ」
「ご忠告ありがとう。肝に銘じておくよ」
「本当に分かってますか?」
「……分かってるよ、そのくらい」
謝りに行こうとして奇策を思い付き、それを早速実行してしまったものだから、すっかりタイミングを逃してしまった。
犬の姿でなら思う存分、甘えられるに。我ながら情けない。
ハーブティーをひとくち口に含んで、ソーサーにカップを置くと、テーブルに置かれた濃紺色の封筒に気が付いた。封蝋の刻印に見覚えがある。
「これは?」
「カレバメリア帝国皇帝からの御手紙でございます」
「なんだって?」
魔塔主宛の手紙は特別な指示がない限り、全てアルノートが目を通してからエスティリオの元へ渡されている。
開封されているので既に内容を知っていると思い、アルノートに尋ねた。
「国賓として魔塔主様を招待したいそうです。まだ皇帝にはお会いになっていませんから」
エスティリオが魔塔主に就任する式典には、皇帝ではなく息子が来ていた。
魔塔主に就任してしばらく経つので、落ち着いたタイミングを見計らって、ということだろう。最近はこういう招待状がぐっと増えてきた。
「ふっ……いいタイミングだね」
口元を歪ませるエスティリオに、アルノートがドン引きしている。
「ご自分が今、凄くわるーい顔をなさっているのをご存知ですか?」
「そう?」
「帝国に何か因縁でもおありで?」
「さあね。ただ悪い子にはお仕置しないと」
「何をなさるつもりか知りませんけど、貴方は魔塔主なんですからね」
「ははっ、知ってる。魔塔主だからだよ。行くと伝えておいて」
魔塔主だからこそ、許すわけにはいかない。これ以上ラシェルを苦しめることも。
優雅にハーブティーを飲みながら悪巧みをする主人を前に、アルノートは苦笑いをし、ただ「御意」と短く答えた。