呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
日が暮れてきて、空の色が茜色に染まる。
アルベラとナタリーは仕事を終えて帰っていった。
ラシェルも片付けをして宿舎へ戻ろうと動き回っていると、昨晩と同じように、出入口からカタンッという音がした。
ふふっ、器用な犬ね。
出入口のドアを自由に開けられちゃうんだから。
「リオ、いらっしゃ……」
当然リオがまた来たのだと思ったラシェルだったが、犬がいると思った場所にいたのはエスティリオだった。
「魔塔主様……」
固まって動けないのは、エスティリオが魔法をかけたからではない。何をどう挨拶すればよいのかも思いつかない。もう会いに来ないと思っていたから。
ただ見つめるばかりのラシェルに、ゆっくりとエスティリオが近づいてくる。
「エル……もしも口付けをすると呪いが解けると言ったら、エルは俺を許してくれる?」
「え……?」
ラシェルへと伸ばされた手。
塞がれた唇。
頭の後ろに手をあてがわれて、深く唇が重なり合う。
「んん……」
口の中をなぞられ、エスティリオの喉がゴクリと鳴る。その後の一瞬に、僅かに手の拘束が緩んだ。
「な……っ、何をなさるのですか?!」
突然来たかと思ったら、キスをしてくるなんて。
既に傷付きボロボロになりかけた心を、更に引き千切られたような気分だ。
エルの事を好きだからって、こんなこと……。
泣き出しそうになるラシェルを前に、エスティリオは「やっぱりそうだ」と頷いている。
なにが「そう」なのだろう?
人の気も知らないで、平然とした顔をして……!
「エル。俺、知っているんだ」
「知っているって……何を……」
ドッドッと鼓膜に、鼓動の音が鳴り響く。
呼吸することすら、忘れてしまいそうになる。
その先の台詞を、聞いてはいけない。直感的にそう思った。
「エルが本当は何者なのか」
「――――!!」
ラシェルがエスティリオを押し退けてドアの方へと走り出すと、すかさず腕を掴まれて後ろからキツく抱き締められた。