邪に、燻らせる

錦秋の候/揺蕩うは金木犀

こまめなメンテナンスが大事なんです。
心の制御ブレーキってものは。
これまでの人生で経験してきた過去の恋愛たちが教えてくれた最も偉大な教訓は『いかなる時も慎重を期して望め』だ。
あとは『常に期待は裏切られる』もある。
「はい!よろしくお願い致します!」
電話の時は、いつもの3倍明るい声で。
とあるイギリス映画の翻訳の直しを後藤にメールで送った後、念のため到着確認で掛けた電話を常套句で終話させる。
ようやく今、長きに渡る私の戦いが終幕を迎えたのだ。
冬爾に背中を押されて依頼を受けた映像翻訳の仕事だったが、やはりこれまで培ってきたスキルだけでは心許ない部分も多く。
後藤から紹介をいただいたベテランの翻訳家の方にレクチャーを仰いだり、自分でも改めて学び直したりと、1作品を訳すのに途方もない労力を要した。
そして、さらにそれと並行しながら『嵐が丘』の締め切りも佳境を迎えており、ここ数日は特にハードな生活だった。
しかし、それも今この時を以て終了だ。
私はすべてのしがらみから解放された。
「寝る!」
ここ数日は2時間睡眠を続けてきた私は、アラームをセットせずに寝られる幸せを噛み締めながらベッドに潜り込んだ。
まだお昼の13時過ぎだなんて気にしない。
私はこのまま朝まで寝るんだ。
そう思って目を閉じた矢先のことだった。
「…誰よしつこいな」
部屋のインターホンが鳴った。
どうせ宅配便か何かだろうと睡魔に負けて一度は無視したが、何度もしつこく鳴らされるので仕方なく起き上がると。
「やっぱり居んじゃねーかよ」
「…は?」
モニターに映り込む男の姿に、思わず言葉を失うのだった。
「ひっさしぶりだなあ寧子!元気か!」
「…まあ元気だけど」
「俺先週2年ぶりに帰国してさあ、今日仕事でこの近く来たら寧子まだ住んでるっぽいし顔見に来てやろうと思って」
無遠慮にズカズカと部屋の中に上がり込んでくるその男。
黒木夏深は、かつて私の恋人だった。
白い長袖のTシャツに色褪せた紺色のダメージジーンズで、肩につくほどの長さの髪は後ろでざっくりと一つに結ばれている。
肩に掛けた四角く黒い鞄には、この男の仕事道具であるカメラとその手入れ道具なんかが詰め込まれていることだろう。
「てか寧子、お前老けたなあ」
「2年ぶりに会って最初に言うことがそれ?」
「付き合ってた頃はもうちょい艶っけと可愛げのある美人だったんだけどなあ」
「悪かったわね劣化しして」
圧倒的に変わらない、この男の無神経さ。
久しぶりにそれを痛感しながら、さっきまでの眠気も衝撃で吹き飛んだ私は、コーヒーを淹れることにした。
「世界一周してみてどうだったの?」
「もう最ッ高!すげえ楽しいことも怖いことも綺麗なもんも経験して大満足だわ」
夏深は嬉々として旅の思い出を語っている。
煙草に火を点けたのが見えた。
日本で商業カメラマンとしての成功を収めた夏深は、だけどその仕事の幅の狭さに行き詰まりを感じているようだった。
元来自由で無鉄砲な夏深にとって、日本での制約の多い仕事は肌に合わないことも多かったのだと思う。
そして私との結婚話も空中分解し、ちょうど足枷のなくなったその足で、夏深は日本を離れて世界へと飛び出して行った。
海外のエージェントと契約しながら、世界中でアートとしての写真を自由に撮ることは、夏深にとっては最高の贅沢だっただろう。
「お、サンキュー」
「仕方ないからマフィンもつけてあげる」
「牛乳多めのカフェオレに砂糖4本、さっすが寧子!」
「相変わらずのお子様舌」
「まあな」
夏深は昔から子どものままの味覚だった。
コーヒーは砂糖もミルクもたっぷり入れなきゃ飲めないし、好きな食べ物はハンバーグとオムライスだった。
お酒は好きなくせに弱くて。
酔っぱらうと、誰かれ構わずキスをしていた。
「あ、そうだこれ土産、やる」
「石…?」
ゴソゴソと鞄を漁って夏深が取り出してきたのは、拳ほどの大きさの石だった。
「サファイヤの原石、オーストラリアの鉱山でこういうのがザックザク取れて、中にちゃんと綺麗なの入ってんだって」
「へええ、この中に」
「加工すれば綺麗なサファイア取り出せる」
「どこで加工してくれるの?」
「…オーストラリア?」
くわえ煙草で首を傾げる夏深に、笑った。
何それ、夏深は私にオーストラリアまで加工しに行けって言ってるの?
「あはは、センスの悪いお土産!」
「うるせえな、そんなこと言うなら返せ!」
「返す返す、ちゃんと加工して綺麗にしてからまた届けてね」
「お前はほんっと可愛くねえな!」
夏深が何をしに来たのか、私は聞かなかった。
理由がないことを知っていたから。
ふらっと漂うように、思いつくまま気まぐれに生きている夏深の、そういう掴みどころのない部分に翻弄される恋だった。
振り回されて、泣かされて、でも好きだった。
まだ青臭さの残る、若くて瑞々しい季節を夏深と過ごして、そして別れた。
最初から最後まで、覚束なくて苦しくて。
別れ際には散々罵り合った。
だけど人生で、きっと唯一。
私は夏深に、―――全身全霊で恋をしていた。
「さて、そろそろ次の現場行くわ」
「当分は日本にいるの?」
「んー…まあ予定ではそのつもりだけど先のことはわかんねえなあ」
「もう若くないんだから、ほどほどにね」
「うるせえわ」
玄関先で、履きこまれたエンジニアブーツに夏深が足を入れながら笑う。
垂れた前髪の隙間から、二重の目が見えた。
「寧子、俺とより戻す?」
懐かしさから出た、タチの悪い冗談。
でも私が頷けば、このまま抱きしめて、こんなに大雑把な性格には似合わない、とても優しいキスをくれる。
夏深は、そういう男だ。
そういう夏深に、私はもう心底懲りている。
「結婚までいってダメだった相手とはもう何したってダメでしょう」
「だよな、言ってみただけ」
「知ってる」
夏深は最後に苦笑して、部屋を出て行った。
テーブルの上に置かれたサファイアの原石を持ち上げて、コーヒーを啜る。
原石なんて、私と夏深みたいね。
私たちと同じで、何者にもなれずにいる。
私はこの先、この石を綺麗に加工して取り出すことなんてないだろう。
母石の中に閉じ込められて、日の目を見ることもなく、そうして時の流れの中に風化して忘れられてゆく。
だけど不思議と、胸は痛まなかった。
込み上げるのは懐かしさだけだった。
若くて青臭い季節は過ぎて、好きだった男の笑顔を、懐かしく思うほどに遠くまで来ていた。
――ああ。
「相変わらず無神経な男」
煙草の先に火を点けながら、私は煙の中に、ため息を濁した。
𓂃𓂃𓍯𓈒𓏸𓂂𓐍◌ 𓂅𓈒𓏸𓐍
「寧子ってほんと化けるよなあ」
部屋から出てきた私を見下ろして、冬爾が呟いた。
ノースリーブの黒いセットアップの上に薄手のジャケットを羽織り、爪先の細いハイヒールを履いた私は、普段の何倍もフォーマルだ。
コーディネートが全身黒で地味なのでと思い髪はふわりと巻いたまま下ろして、リップはブラウンレッドでシックに。
私だって、本気を出せばこういう大人のお洒落もできるのだ。
毎日それを頑張る気概がないだけで。
「ドキッとしちゃった?」
「普段からそれぐらいのクオリティで生きてればいいのになあと思った」
「ここまでになるのに1時間掛かるのよ!」
「ちなみにそのドレスはどこの?」
「えっ、これはその、偶然GIVENCHYで…」
「ほんと馬鹿じゃねえの」
一方の冬爾は、普段通りのスーツ姿だ。
だけど清潔感のある白いポケットチーフや癖のあるデザインのネクタイピンなんかを身に付けている分、仕事の時よりも遊び心のある着こなしがお洒落だった。
今日は、後藤から招かれた来月公開予定の映画の試写会と、その後のレセプションパーティーのお供を冬爾に頼んだ。
とは言っても、私が翻訳した映画の公開はまだまだ先なので、これは単なるご褒美。
幾度となく躓きながらもなんとか初の映像翻訳の仕事を終えた私に、後藤がささやかながらも施しをと招待してくれたのだ。
そしてこういうものは、基本的に男女同伴がスタンダードなので、私は他に誘える相手もおらず冬爾に頭を下げた、という経緯である。
「変な感じするわ、寧子と外で会うの」
「実は初めてなの気づいてた?」
「気づいてた」
そう、私たちは外で会うのが初めてだ。
精々帰り道に偶然会って駅から家までの数分間を一緒に歩く程度のお出かけ以外、冬爾と外で会ったことはない。
特に意識していたわけではない。
こんな関係だから…、なんて卑屈な気持ちで誘わなかったわけでもない。
単に毎日のように夕食の席で顔を合わせている相手と、さらに外で会う必要性が今まで一度も生じなかったのだ。
「映画の上映って何時だっけ?」
「16時からだから若干時間あるのよね、何か済ませたい用事とかない?」
「んー…なら本屋寄ってもいいか?」
「もちろん大歓迎」
仕事柄、本屋巡りは大好きだった。
法務関係の資料を探したいという冬爾に付き合っても役に立たないのはわかっていたので、私も私で好きに本を見て回る。
駅前の本屋は、さすがに品揃えが良かった。
文芸書籍の本棚を順に見て回り、次に買いたい本のリストを携帯のメモに残しながら、各分野の話題書籍が平積みされている棚の前で足を止める。
そこで話題の新刊として紹介されていた写真集を、思わず手に取った。
『TOURIST』なんて如何にもなタイトル。
本当に、夏深らしい。
その写真集の中には、私と別れてから歩んだ夏深の軌跡が写し出されていた。
灰色の街。
ゴミの中で微笑む少女。
恐ろしいほどに瑞々しい樹海の奥地。
深い海の底。
相変わらず、あのガサツで神経の図太い夏深のどこに、こんなにも繊細で美しい感性が秘められているんだろう。
そう思うほど、切なくて愛おしい刹那の情景。
夏深の撮る世界は、私の憧れそのものだった。
―――ああ、本当に。
「好きだったなあ…」
写真集の表紙を撫でながら、こぼれた呟きは少しため息に似ていた。
「あ、寧子、こんなとこにいたの」
「冬爾…」
私を見つけた冬爾は腕時計に視線を落とす。
そろそろ行くか、と言いながら、冬爾は私の手の中の写真集に目を留めた。
「なにそれ写真集?買うの?」
「…そうだね、売上に貢献してあげなくちゃ」
「貢献って、知り合いの出した本?」
「うん、元カレ」
きょとんとする冬爾に軽く笑って、レジに精算をしに行く。
そこから戻ると、冬爾は店の前で待っていた。
「お待たせ、行こっか?」
「元カレの写真集なんて、随分と未練たらしい買い物だな」
「そうだよね、自分でもそう思う」
だけど未練とは少し違うの。
どちらかと言えば、宝物に近いもの。
だけどそんなことは、自分以外の誰にも理解されるものではないとわかっているから、言葉にはしなかった。
夏深とは、本当にもう終わってる。
そこに未練はないって言い切れる。
だけどそれでも、夏深はこの先も。
ずっと私の中での特別で在り続けるというだけだ。
「ちょうどいい時間だね」
「試写会とか来んの俺人生で初めてかも」
「私もだよ、これから先はもしかしたら機会が増えるかもしれないけど」
「きっと増えるよ」
そう言って、冬爾は私の背中を優しく叩いた。
駅前の商業施設内になる映画館のロビーには、一般客に紛れて綺麗な服を着た招待客がちらほらと散見される。
試写会で上映されるのは、ハリウッドで制作されたアクション映画の第3シリーズだった。
アクション映画なんてほとんど見たことがない私に対して、意外にも男らしくこの手の映画は大好きだと言う冬爾は、これまでの2作も見たことがあるらしい。
「もし寝てたら起こしてね、一応来る前に前作2本とも見たけど両方途中で寝ちゃって…」
「お前しっかりしろよ」
「今日はさすがに起きてると思うけど」
声を潜めて囁き合う。
冬爾は呆れたように顔をしかめていた。
抽選で席を確保した一般客と分けて、招待客は2階の席に配置されるらしく、席からスクリーンは結構遠い。
とはいえ映画が始まってしまえば大画面の迫力とサウンドで、そんなことも気にならなくなるのだろうけど。
「途中舟漕いでたぞ」
映画の上映が終わった後、眠い目をこすりながらあくびを押し殺している私を、冬爾が振り返った。
「冷や冷やさせんなよなあ」
「…だって前作途中で寝たから全然話繋がんなくてさあ、でも耐えてたでしょ?」
「ギリギリアウトだろあれ」
「関係者の人に見られてませんよーに」
そんな会話をしながら、映画館のすぐ傍にあるホテルまで歩いて移動する。
その間には大きな広場があって、日の暮れかけたそこには、甘い金木犀の香りが人の合間を縫うように揺蕩っていた。
「そろそろ秋だねえ」
「日が落ちるのもかなり早くなったよなあ」
「きのこのパスタ食べたいなあ」
「絶対出ねえよパーティーじゃ」
上映後のレセプションは立食形式のパーティーだったので、私と冬爾はシャンパンを片手に会場の隅で優雅に過ごす。
「挨拶とかしなくていいの?」
「新参すぎてまだ知り合いほとんどいないからね、そもそも本来この場に私はいなくてもいい存在だし」
「気楽でいいな、俺なんか普段パーティー来たら立ち回って持ち上げて媚びへつらってって大変なのに」
「冬爾って人に媚びたりできるの?」
「仕事ならいくらだってするさ、結局税理士なんか企業に使われてナンボの商売だからな」
「潔くていいね」
冬爾の仕事に対する姿勢は、見ていて気持ちが良い。
情熱とプライドと、そして割り切り。
その境界線がはっきりしているからこそ、彼の信念は揺らがない。
「あ、常盤さんここにいたんですか!」
不意に声を掛けられて振り返る。
ハイセンスと言うべきか理解の追いつかない緑色のスーツを着た後藤が、気さくな笑顔で駆け寄ってきた。
「すみませんねえ、放置しちゃって」
「とんでもない、こちらこそなかなか声を掛けられずで」
「ええと、こちらの方は…」
「私の友人で鷹司さんと言います、普段は税理士をされていて、パートナーがいなかったものですから今日は無理を言って付き合っていただいて」
「鷹司です、初めまして」
「後藤と申します」
流れるような大人の会話だった。
後藤と冬爾が互いに軽く会釈をした瞬間、全員が社交辞令の装備を身に纏う。
「鷹司さんは税理士さんですか!通りでこの業界ではまずお目に掛かれないスマートで紳士的な出で立ちだなあと思ってたんですよ」
「そんなとんでもない、普段数字とばかり睨み合ってるような地味な人間ですから、むしろ僕の方がこんな華やかな場には不釣り合いで」
「いえいえ、今日は常盤さんも一段とお美しいですし、友人同士でいらっしゃるのがもったいないほどお似合いのおふたりで」
「そんなこと言って下さるの後藤さんだけですから、それにそちらはご挨拶回りなんかも大変でしょうし、今日は私のことまで気を回されないで下さいね」
なんて云々を、延々長々と。
表情筋が疲れてきた頃、後藤が別の招待客に声を掛けられたことで、空洞化した会話は静かに終結を迎えた。
「寧子も大人やってんなあ」
「冬爾こそ、普段の立ち回りが見えたわよ」
「職場違うとお互い仕事してる姿ってなかなか見えねえもんな、ちょっと新鮮だわ」
「お似合いだって言われちゃったね」
「社交辞令だろ」
「どっちに向けての?」
パーティーがひと段落したところで、私たちは抜けさせてもらうことにした。
受付に預けた荷物を受け取って、何か買って家で飲み直そうかなんて冬爾と話しながらホテルのエントランスを横切った時。
「――――…あれ、冬爾?」
凛と通る声が響いて、ふたり脚を止めた。
そこには長い黒髪の綺麗な女性と、スーツ姿で背の高い男性が腕を組んで立っていた。
「え、紗里?何してんの?」
「今からこの上のレストランで食事なの、冬爾こそ休日にそんな恰好でデート?」
「そういう訳でもないけど、まあまた週明けに職場で話すよ」
「そうね、じゃあまた週明けに」
女性はにっこりと私に微笑んだ。
それに私も軽く頭を下げれば、満足したように隣の男性の腕を引いて中に入ってゆく。
「あの女の人、職場の同僚?」
「まあな」
冬爾はそれきり、彼女の話をしなかった。
そうして家に着くなり、コンビニで買って来たビールも開けないうちに、冬爾は私のドレスを脱がせた。
下手な男だと思った。
こんな時ばかりダダ洩れで、恰好悪い。
結局三十手前の男と女は、過去の恋に縛られて成り立っている。
だけど私たちの間には、恋はないので。
冬爾はきっと、私で都合の悪いことを全部紛らわせてしまおうと思ってるのだろう。
「さっきの、前言ってた元カノ」
情事が終わった後、互いが燻らせる煙草の煙に紛れながら、冬爾はぽつりと言った。
私は少し迷って、「そうなの」とだけ返した。
「綺麗な人だったね」
「そうか?寧子の方が全然可愛いよ」
「…なんじゃそりゃ」
空いた方の手で私を抱き寄せた冬爾が、手持ち無沙汰を誤魔化すみたいに、どこかぞんざいに唇を重ねた。
その時、私は心の中で、まずいと思った。
今、一瞬緩んだ心の隙間に、サクッとナイフが刺さりそうだったから。
何気なく言っただけだろうけど、それでも昔の恋人と比べるようなことなんか、こんな関係の私に言わないで欲しい。
だってそんなの、浮き彫りになるだけだ。
可愛くなくても好きだった女と。
可愛くても好きにならない女との、差。
冬爾とはこのままずっと、心穏やかに過ごすと決めているのだ。
でも心の制御装置は、脆いから。
メンテナンスはこまめに、そして入念に。
「今日は根掘り葉掘り聞かないの?」
「…聞いてほしいの?」
「別に?俺的にはさっきの写真集の元カレの方が興味あるけど」
「あれは話したってつまんないよ…」
夏深のことなんて、頭の中から抜けていた。
冬爾の目がじっと私を見つめる。
「そんな好きだったの?」
「元カレのこと?まあ昔は好きだったけど…」
「ふうん」
冬爾は、裸のままの私を抱き寄せた。
素肌同士が触れ合って、絡み合って、何故か夢中で何度もキスをした。
一度したばかりなのに、急速に互いの熱が高まってゆくのを感じながら、剥き出しの綺麗な冬爾の背中にしがみつく。
そうしていないと、何かが。
今にも壊れてしまいそうだったから。
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