こちら元町診療所
love is‥


深いところまでは聞けないけど、棗先生に役に立たないって言われたことは
正直落ち込んだな‥‥


そんなこと分かってる‥‥。

片や医学部を卒業して医師として活躍している叶先生や棗先生に対して、医療事務員の私は院内ではサポートは出来る
ものの、一歩外にでれば育ってきた
環境が違うから価値観だってきっと
合わない。


でも‥‥人を好きになるのに、地位とか
がそんなに重要なの?私が生きてきた世界にそんなルールはなかったから、
そんなの気にしたくない‥‥。


心配しないでいいという言葉だけを
今は信じたい‥‥。




平日の仕事を終えて、スーパーで買い物を終えた私は、マンションの前に停まる
一台の高級車に目が止まった。


マンションに似つかわしくない車なのは
当然のことだけど、誰かの友達とかお客様だとしても、道幅が狭いこの路地によく入って来たものだ。


どんな人が乗っているのか気になりつつも、ポストの郵便物を手に取ると、
エレベーターが降りてくるのを待った。


『中原 靖子様ですね?』


えっ?


見たこともないスーツを着た男性が、
私を見るなりニコリと微笑み頭を軽く
下げた。


‥‥だ、誰?
というより、なんで私の名前を知って
るのかがものすごく怖い‥‥


返事をするのを躊躇い、到着した
エレベーターに視線を移すと、このまま
乗り込み逃げても追いかけられて
箱の中に2人きりの方が怖いと思い
乗るのを辞めた。


どうしよう‥‥‥
先生に電話する?そ、それとも警察‥


『怖がらせて申し訳ありません。
 私は叶 花絵様の秘書をしております
 山根と申します。花絵様は大志様の
 お母様でして、中原様と是非お話が
 したいとお車の中でお待ちです。』


えっ?


ええっ!!?


た、大志さんのお母さん!!?


色々なことを一気に言われて頭が若干
パニックになりつつも、表に停まっている車に今度は視線を移すと、後部座席
の窓がスーっと降りて、美しい女性と
目が合った。


似てる‥‥‥。
色素の薄い目、それに整った綺麗な顔立ちがここからでもハッキリと見えたことで、秘書というこの人が言っている事が
嘘ではないと思えた。


「あ、あの‥‥お話って何を?」


『それはわたくしからは‥‥‥。
 連れ去ろうなんてことは致しません。
 少しだけお時間を頂戴いただけませ
 んか?』

ドクン
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