こちら元町診療所
嫌がる私を他所に、力強い手に強引に
連行されてしまい振り解けない。

すっぴんな状態で出会ったばかりの人と朝ごはんとか無理だし!!


「先生!!私は帰りッ!!」

『もう用意してあるから‥‥ね?
 勿体無いから食べないか?』


な‥‥な‥何これ‥‥ッ!!
広々とした開放的な空間に大きな
テーブルがあり、その上に並べられた
ホテルの朝食のような食事に目が点に
なる。


『靖子?』

「‥‥‥」

『靖‥‥フッ‥‥やっちゃん?』


ええっ!?や、や、やっちゃん?


私の顔を綺麗な顔が覗き込むようにして
距離を詰めてきたことで我にかえり、
慌てて距離を取った


「やっちゃんも靖子も駄目です!!
 私、先生と出会って2日目ですよ?」


他の人にもこんな感じで常に距離感が
近いのだろうか?こんな異性に出会った
事がないけどね?


『‥課長さんはやっちゃんって何度も
 呼んでたよね?なんで俺はダメなの?
 あの人は靖子の何?』


「はぁ?か、課長?‥‥課長はただの
 課長でそれ以上何もないです。」


なんでここで突然課長が出てくるの?


目の前の素晴らし過ぎる朝食は惜しい
けど、やっぱり帰ろう‥‥。
せっかくの週末、しっかり休んで
おかないと、来週から始まるレセプトが
キツイから。


覗き込む顔を雑に手でグイっと
押しやり、体の向きを変えて背を向けた


『じゃあ俺もどう呼んでも
 構わないよね?さ、食べよう?』


ん?


強引椅子に座らされ、背後から逃げられ
ないように椅子の膝掛けに先生の手が
置かれる。


『靖子』

「ッッ!!!」


クスクスと笑いながら左隣に座る先生
が、私の頭をクシャリと撫でると、
美しい顔で優しく笑った


本当になんなんだ‥‥この人は‥‥。
どうして私なんかに構うのだろう?
女がみんなこんな事をすれば喜ぶと
思ってるのか?


食べ物に罪は全くないから食べるよ?
だって勝手に用意したんだし、捨てたら
勿体無いしさ?


「‥クゥ‥悔しいけど‥美味しい。」

『ほんと?良かった。』

「先生が作ったんですか?」


彩りが美しいサラダやポタージュなど
手の込んだ食事はどれもお店で食べる
ような美味しさだ
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