こちら元町診療所
募集はかけてるから、事務員が増える
ことを祈るばかりだ‥‥。


『それにしても今日も忙しそうですね。
 行列が既に出来てますし‥‥』


「うん‥そうだね。
 お待たせしないように
 なるべく会計早く頑張るよ。」


河野くんと、課長にも午前は助けて
頂いて、午後は予約分だけなので、
なんとか浜ちゃんと2人で17時まで
頑張っている。


課長達も診療所の事務仕事があるから、
なるべくは2人でまわしたいところ
だけど、今は本当に無理なのだ。


私達は手一杯だけど、それをこなす
叶先生は文句ひとつ言わない。それ
どころか、カルテ入力は完璧で、
いつこなしているのかも分からない。



そして診察に関しては丁寧で的確で、
カルテもとても分かりやすいから、
尊敬できる。ただね‥オフよ。
オフがね‥‥‥。



『靖子さん、開けますね。』


8時30分

9時からの診療スタートに向けて
受付が始まり、ここの出だしで
1日が決まると言っても過言ではない


ここから正午までは、全員がノンストップで手を休める事なく受付しては会計の
繰り返しで、金曜日ともなるといつも
よりも忙しさが増し、最後の患者さんをお見送りする頃には13時を迎えようとしていた。


『浜ちゃんお疲れ様。食堂みんなと
 行っておいで。』


「靖子さんはお弁当ですか?」


『うん‥電話番しながら食べるから
 気にしないでゆっくり休憩して
 おいで。』


まだ半日しか経っていないとは思えない
ほどの事務員達の疲労感漂う姿を見送ると、誰もいなくなった医事課で机に
突っ伏した。


あーーーー指が痛い!!
キーボード連打し過ぎて感覚が最早
無くなりかけてる。


少し忙しいくらいなのは暇よりはありがたいけど、流石にこのペースが続くと
体力的にしんどい‥‥


「‥‥‥‥甘いものが食べたい。」


『フッ‥‥ご苦労様。』


えっ!?


突っ伏したまま瞳を閉じていた私が
勢いよく瞳を開けると、いつの間に
隣の席に座っていたのか、私の顔を
覗き込む叶先生に眉間に皺がよった


「‥何してるんですか?」


こっちはクタクタだというのに、
朝会った時と爽やかさが全く変わらない
相手に眩しくて目を逸らす


1人きりの穏やかな時間‥‥
ましてや1番会いたくなかった相手に
嫌悪感が増してしまう


『靖子っていつも怒ってるね。
 皺が増えちゃうよ?』


「先生が私を笑顔にしてくれたら
 良いんじゃないですか?」
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